http://bylines.news.yahoo.co.jp/fuwaraizo/20160523-00057963/
人はこれまでの実体験や教育、各種情報媒体を経由して知り得た知識などをもとに、対象物へのさまざまな代表的イメージを想起する。東京ならば東京タワーや東京ドーム、渋滞、秋葉原などが好例。それでは海外の人達は「日本」との言葉を耳にした際に、いかなるイメージを頭に浮かべるのだろうか。新聞通信調査会が2016年4月に発表した、アメリカやイギリス、フランス、中国、韓国、タイへのメディアに関する世論調査「諸外国における対日メディア世論調査(2016年調査)」」(アメリカ合衆国、イギリス、フランス、中国、韓国、タイに対し、2016年1月から2月に実施。アメリカ合衆国・イギリス・フランス・韓国は電話調査、タイと中国では面接調査。調査地域は中国・タイは都市圏、それ以外は全国。回収サンプル数は各国約1000件)などの内容から、その実情を確認していくことにする。
次に示すのは調査対象国それぞれで確認した、「日本」と聞いて思い浮かべることの上位陣。設問では「あなたが『日本』と聞いて思い浮かべることを一言でおっしゃってください」とあり、自由記述形式・単数回答となっている。またその内容を調査会側がある程度集約し、統計値として計上している。今回は公開回答値のうち、各国の回答率が5%以上のものに限定して確認を行う。
まずは調査対象国のうち欧米各国。
↑ 日本と聞いて思い浮かべること(2016年、回答率5%以上)(欧米)
↑ 日本と聞いて思い浮かべること(2016年、回答率5%以上)(欧米)
第二次世界大戦、原爆、真珠湾など、太平洋戦争における日米の戦いを想起した人がもっとも多く16.1%。次いで文化や歴史を挙げた人が8.6%。歴史観に係わる項目を挙げる人が多い。そして日本食、とりわけ寿司を挙げた人が6.1%と続く。科学技術をイメージした人は5.1%でしかない。
イギリスでは太平洋戦争で直接対峙した機会はアメリカ合衆国と比べて少ないからか、戦争に係わる項目は5.0%。日本食や寿司、そして生魚といった食文化に対するイメージがもっとも多く10.1%。イギリスと似た地政学的立場にあるからなのか、国、島国を挙げる人が続く。
フランスでは文化や文明、芸術などカルチャー部門への興味関心が強い。続く日本食、寿司、料理も食文化ではあるが文化に違いは無く、日本を文化的な観点で見ているようだ。また同国が原発による発電大国であることに加え、震災時には多様なサポートを行ったこともあり、東日本大地震や原発事故に絡んだイメージも強い。なお漫画、アニメは4.9%となっている。
↑ 日本と聞いて思い浮かべること(2016年、回答率5%以上)(アジア)
↑ 日本と聞いて思い浮かべること(2016年、回答率5%以上)(アジア)
様相が一変するのがアジア地域。まずタイだが、同国では日本への観光を憧れる傾向が強く、日本食をはじめとした食文化、そしてさまざまな情景を想起する人が多い。どのような需要があるかよく分かる。
他方、中国では抗日戦争や中国侵略、南京大虐殺など歴史観に絡んだ意見が多い。桜やハイテク技術、アニメや漫画など多様な文化への注視もあるが、歴史観周りの回答だけで3割を超えているのは圧倒的。なお回答値が足らずにグラフ上には現れなかったが、魚釣島(尖閣諸島)問題は2.6%、軍国主義は2.5%となっている。
さらに極端なのは韓国。具体的な回答例の列挙のように思える(集計する際に苦労したようすがうかがえる)「嫌い、不快、不信」は単独で1/4近く、「侵略、36年間の日本支配」が17.8%、慰安婦が17.6%、「歴史認識、曲解」が6.4%と続き、中国以上にネガティブな意見が連なっている。これら上位のマイナス意見だけで2/3に達しており、韓国の日本に向ける思いの実態が良くわかる結果となっている。ちなみに独島(竹島)問題は2.8%。
あくまでも今件は一般市民に問い合わせた結果で、しかも単数回答の集計のため、これらの意見のみがそれぞれの国の全体意見ではない。また、国策・外交政策の基本でもない。他方、それぞれの国に住む人の思いの内面の一指標として、留め置くべき結果には違いない。