大震災・茨城から(3)病院が損傷 入院を中断 | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 「入院できたら具合が悪くなっても安心なのに」

 胃がんを患う茨城県筑西市の鈴木良祐さん(75)は6月中旬、自宅の布団に横たわり、こう話した。

 東日本大震災が発生した3月11日、同市は震度6強を観測。発熱し、3日前から筑西市民病院に入院していた鈴木さんの病室では、テレビが床に落下した。ベッドで寝ていた鈴木さんの腹にもテレビ棚が倒れてきた。窓の外では、電柱や桜の木が激しく揺れていた。

 揺れが収まると、71人の入院患者は病院玄関前の駐車場に移動、1時間ほど待機して近くの体育館に避難した。医師が一人ひとり診察し35人は転院し、残りは自宅に帰ることになった。

 「今、体育館に避難している。迎えに来てほしい」

 同日夜7時頃、鈴木さんが自宅に電話すると、家族は驚いた。「連絡は取れなかったけれど、病院は安全だと安心しきっていました」と妻、悦子さん(69)。慌てて体育館に向かった。

 築40年の同病院は、「震度6強でも倒壊しない」とした新耐震基準を満たしていなかった。壁に亀裂が入り、使用できなくなった。

 厚生労働省の調査では、国の耐震基準を満たしている病院は全国で56・2%にとどまる。同病院は新築が検討されており、耐震補強は行われていなかった。

 同病院は、駐車場にテントを張り、3月14日に再診患者の診療を始めた。その後、プレハブを建て同24日から本格的に診療を再開した。だが、エックス線装置やMRI(磁気共鳴画像装置)は今も使えない。入院患者や救急患者も受け入れることはできていない。

 鈴木さんは転院を勧められたが、「知らない医師や看護師がいる病院には行きたくない」と断った。この3か月間は、同病院に通院したり往診してもらったりの毎日だった。

 同病院は数年前、医師不足で、173床あった病床を60床に減らした。常勤医は一時は6人にまで減ったが、現在は10人に増え、病床も90床にした。約300台だった救急車の受け入れ台数も昨年度は760台に増えた。そのタイミングで震災に見舞われた。

 病院長の石川義典さんは「地域医療に積極的に貢献していこうとしていた時に地震が起きて残念だ。だが、これを機に入院患者10人に対し1人である看護師数を7人に対し1人にすることを検討するなど、医療の質を高めたい」と意気込む。

 再興に向け、同病院は5階建ての建物の3階から上の部分を取り壊し、建物にかかる荷重を軽減するほか、今秋には50床の病床や手術室を備えた新病棟も完成させる予定だ。

(2011年6月29日 読売新聞)