大震災・茨城から(4)県内の病院9割が被害 | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 東日本大震災は、茨城県の医療にも大きな影響をもたらした。現場でどう対応し、どんな課題に直面したのか。同県医師会長の斎藤浩(こう)さんに聞いた。

 ――医療機関の被害状況はどうだったのか。

 県北部の海沿いを津波が襲い、神栖市などでは液状化現象も起きました。

 震災は岩手、宮城、福島の3県だけでなく茨城県にも大きな爪痕を残しました。しかし、その実情は全国にあまり伝わっていません。県医師会が行った調査では、壁が落ちるなど、県内の約9割の病院で、何らかの被害を受けました。中には2億~3億円の被害を被った医療機関もあります。

 県全域で停電や断水があり、すべてが復旧するのに約1か月かかりました。MRI(磁気共鳴画像装置)などが壊れて使えなくなり、今でも検査ができない医療機関もあります。

 ――発生後の対応は。

 情報の共有や伝達を迅速に行うため、県内の医療機関を6グループに分け、患者の病状やベッドの空き具合などを報告してもらいました。この取り組みを約1か月半続け、入院患者の転院などに役立てました。

 ガソリンが不足し、患者搬送や医師の移動に支障をきたしました。県医師会は3月15日、業界団体に医療機関の車両を優先的に給油してもらえるよう依頼し、対応してもらいました。

 ――東北地方の被災者も受け入れたが。

 茨城県も被災地ですが、隣の福島県から避難してきた人たちも受け入れました。皆さん、福島第一原発の事故による放射線被曝(ひばく)の不安を抱えており、一時期は2000人近くの方を受け入れました。医師や看護師が避難所を巡回し、健康状態をチェックするなどの活動も行いました。

 3月14日には、水戸、日立、土浦の3保健所で被曝量の測定を始めました。一定の基準以上被曝している場合は、指定医療機関で除染などの処置を行える態勢も整えました。

 ――うまくいったか。

 被曝量の測定は希望者が対象で、約4300人が検査を受けました。健康被害が出るほどの被曝量の人はいませんでした。ただ、一部自治体で「検査をしていない避難者は受け入れない」など誤った情報が流れました。今回の対応は、1999年に茨城県東海村で起きたジェー・シー・オー(JCO)臨界事故を契機に作られた対応マニュアルを参考にしています。マニュアルが県全体に浸透していないことは残念でした。

 ――今後の課題は。

 県内の医療機関の状況を迅速に情報収集し、共有するよう努めたつもりでしたが、うまくいきませんでした。それぞれの医療機関は県外の医療機関とも患者の受け入れなどの情報交換をしています。そのため、状況が刻一刻と変わり、正確な情報を把握するのに時間がかかりました。通信網が寸断された場合に近隣県の状況も把握できるような仕組みを作る必要があります。(利根川昌紀)

(2011年6月30日 読売新聞)