パリトキシン様毒について | ぽんのあれこれ

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  パリトキシン様毒とは

青ブダイなどの南方系の魚に蓄積するパリトキシンに良く似た猛毒です。(注:東京都で発生した青ブダイ中毒では、パリトキシンもしくはその同族体が見つかっておらず、それはつまりパリトキシンによる食中毒ではないのでは?という事を示唆していますが、「じゃあ何の毒にあたったのか?」というと答えが出ておらず、青ブダイによるパリトキシン中毒に似た症状をもたらす毒素の特定やその構造は今も不明で、パリトキシン様毒と言われている、というのが正しい)


本来のパリトキシンはマイトトキシンに次いで有毒で、C129H223N3O54という非常に大きな化学式を持ち、天然有機物では最大の部類に入る化合物だそうです。この構造式を決定したのはなんと日本人。パリトアトキシカという学名のイワスナギンチャクから見つかったトキシン(毒)なのでパリトキシン。


Lethal Dose, 50%:LD50、いわゆる半数致死量はマウス静注で89ng/kg、フグ毒として有名なテトロドトキシンのマウス静注におけるLD50は8.7μg/kgで、μgの1/1000倍がngだから、単位を揃えると8700ng/kgということになるので、パリトキシンはフグ毒の約100倍の毒の強さということになります。(20倍とも言われていますがLD50の値の違いだと思う)


作用機序としてはナトリウムチャネルのナトリウムイオン透過性を増すように作用するとの事ですが、早い話体内の命令や伝達を担う道路の信号機が狂ってしまうことにより体の麻痺や呼吸困難、痙攣や不整脈、致命的な冠状動脈の収縮等をきたします。筋肉においては骨格筋である横紋筋を溶かし、横紋筋融解症による腎不全やそれに起因する多臓器不全まで発生してしまうという恐ろしい毒素です。


そしてそれは魚が作り出している訳ではなく、魚が食べる餌に由来する毒素であることがわかっています。


そのパリトキシンを作り出しているのがイワスナギンチャクという生物と共生関係にある有毒渦鞭毛藻というプランクトン。この小さな小さなプランクトンが大きな分子のパリトキシンを合成しながらイワスナギンチャクと共生しており、このイワスナギンチャクを魚が食べ、それによる蓄積で青ブダイ等は毒化するといわれています。


また、一部ハタ類で発生するパリトキシン様毒は海底に住む有毒渦鞭毛藻をイワシ等が捕食し、そのイワシを食べるフィッシュイーターのハタが毒化するというものだそうです。ハワイではエラに砂の入っているイワシは中毒すると昔から言われていたそうでその原因が渦鞭毛藻の作り出す毒素だったわけです。


  有毒渦鞭毛藻の発生は?

ということは、パリトキシン様毒にあたらないようにするには有毒渦鞭毛藻の発生のない海域の奴らならいけそうな気がします。


ということで、有毒渦鞭毛藻の発生を見てみると



パリトキシン及びパリトキシン様毒の検出技術に関する研究 


イワスナギンチャクの生息域かつ、有毒渦鞭毛藻の確認地点に生息している毒をもつとされる魚たちはアウトでしょう。また、緑の確認地点でないところについては有毒渦渦鞭毛藻がいない、という訳ではなく、単に調べてないという事だと思うので有毒渦鞭毛藻が確認されている北限まではやっぱりアウトの可能性があるなと。

ソウシハギや青ブダイ、中毒の実績をもつ魚はやっぱり食べないに越したことは無いなと思いました。

ソウシハギなんかは身だけにして食べれば大丈夫とか言われてますが、ハコフグの身を食べてパリトキシン様毒中毒も発生していることから、筋肉には蓄積しないというものでもなさそうで、サドンデスの危険性があるのでやっぱり身だけにしても食べないに越したことななさそうな気がしますね。

  自然毒というのは凄い

蛇や蜂等の毒をもつ生物もついつい調べちゃうんですが、やっぱり海産の毒素(マリントキシン)というのは何故か特に興味を惹かれます。毒の強さやどうやって産み出されてるのかとか、何故毒をもつ魚は平気なのか?等。また、現代のハイテクを用いてもその毒素の特定さえままならないというのは一種のロマンだと思うんですよね。


…別にグレが釣れないからそんな事を思っているわけでは無いですよ?(白目)