職場のフロアに一部屋増設するということで大掃除をしたところ、昔からそこに置かれていた胡蝶蘭の置き場がなくなりました。胡蝶蘭といっても、過去に誰かがもらい、気付いた人が気付いたときに水やりをしていただけの、少々かわいそうな運命をたどっていた花です。このままだと、さらに悲しい運命をたどりそうなので、私がいただいて、家に持って帰りました。
職場の明るい窓際に置いてあったときは、あまりさえない風貌だったのですが、家に持ち帰り、鉢を掃除し、床の間に置くと、なんだかいい雰囲気になってきました。(お花の専門家の方がご覧になると、笑われそうですが・・・)
思い出したのが、谷崎潤一郎の『陰翳礼賛』。煌々と照る日差しの中ではなく、ひっそりとした陰翳の中に美しさがある。その日本的な美を説いた本です。
美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える。夜光の珠も暗中に置けば光彩を放つが、白日の下に曝せば宝石の魅力を失う如く、陰翳の作用を離れて美はないと思う。
(谷崎潤一郎、『陰翳礼賛』より)
今は葉も弱々しく、かろうじて花茎が伸びているような胡蝶蘭ですが、花の季節が終わったら植え替えます。育て方をネットで勉強しながらお世話もします。来年の今頃は、もう少し元気な胡蝶蘭をお目にかけられるように。
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