“猿の優等生”になっていないか ─「友」(灰谷健次郎)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

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「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 言葉の仲間分け問題を一つ。

 「カモシカ」「キリン」「木の葉」を、どのように仲間分けするでしょうか。

 普通、「カモシカ」と「キリン」が仲間。そして「木の葉」が別のカテゴリー。そのように分けるでしょう。

 ところが、南アフリカの、ある地方の米作農民は、「カモシカ」と「木の葉」を仲間にするそうです。なぜなら、カモシカは木の葉を食べるから。

 

 社会や文化が変わると、考え方も変わるのだなあと面白く思いました。同時に、自分たちの尺度で物事の考え方の正しさを計ってはいけないということ。むしろ生活と密着した考え方として、南アフリカの農民の思考の方がたくましいような気がします。生きていくために大切なことを、しっかりと身に付けて分かっているから。

 

「猿の優等生って知ってる?

 ほら、竹馬に乗ったり、ミニ・オートバイに乗ったりする猿がいるだろう。

 ああいうの、猿の群に戻すと、全然ダメなのね。何もできないの。知ってる?」

 (灰谷健次郎、「友」(『子どもの隣り』収録)より)

 

 頭の中だけでこねくり回さないで、本当に生活に大切なことを身に付けていく。実体験が希薄になる中、忘れてはならないことだと思います。“猿の優等生”にならないように。