愚直なまでの ─『新・平家物語(十二)』(吉川英治)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

「・・・行家殿は、いわゆる智者だが、智者は逆に、相手の智に、もてあそばれ、愚直な弁慶の方が、かえって、湛増(たんぞう)にも、頼もしき者と見えたのであろう。」

 (吉川英治、『新・平家物語(十二)』より)

 

 人の力を借りたいときに、策を弄して接近しようとする行家と、思いを率直に伝える弁慶。人は論ではなく情で動くとも言われますが、湛増は弁慶のあまりにも一途な思いに心動かされたのでしょう。

 

 話は大きくとびますが、愛を告白するときも、ポエムのような甘い言葉を並べるよりも、時に「すき」と一言、潤んだ瞳で言われると方が、心にぐっとくることがあります。

 私は言われたことも、言ったこともありませんが、きっとそうだろうな、という寂しき想像です。