第二印象、第三印象… ─『新・平家物語(三)』(吉川英治)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

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「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

「やっぱり、貧乏人の味は知ってるから、話はわから」

 (吉川英治、『平家物語(三)』より

 

 平清盛は、もとは貧しい地下人(じげびと)でした。だから庶民は、清盛を自分たちの仲間のように思っておりました。

 しかし、悲しい人間の性(さが)なのでしょうか。最初は、猛威を振るう貴族政治に反対し、地下人のための政治を興そうとしていた清盛も、力をもつにつれ、貴族の政治と同じように、自分の権力を守ることに躍起になっていくのです。

 

 たれの場合も、出発は正しくて美しい。晩年の太上入道清盛は、まるで別人みたいな存在になったが、壮年のかれには、そんな理想もあったのである。

 (同『平家物語(二)』より)

 

 人は第一印象が大事と言われます。しかし、得てして最初はよい所を見せようとするもの。それを持続できるかどうかが真価の問われるところです。第二印象、第三印象…、ずっと魅力的であり続けることが理想です。