年末に実家を訪れた時に、父が「言葉がきれいだから」と言いながら、竹西寛子さんの本、『蘭』を薦めてくれました。父の言葉の通り、情景が、そして心情が、精緻に美しく描かれた本でした。
この本には11の短篇が収録されていますが、その中に表題作にもなっている「蘭」という短篇があります。
(あらすじ)
満員電車の中で、ひさし少年は歯の痛みをこらえられなくなる。なす術のない状況で、父親は、祖父の形見の、蘭の絵が描かれた扇子を引き裂く。そして、その薄い骨の一本を楊枝代わりにしてひさし少年に差し出す。
この話を読んで、どこかで読んだことがあったような気がしました。もしかしたら、自分がよく似た経験をしたことを思い出したのかもしれません。このような懐かしさに出会えることを楽しみに、また、出会ったことのない言葉に出会うことを楽しみに、今年も、ゆっくりと「出会った言葉たち」を綴っていこうと思います。
本年もどうぞよろしくお願いします。
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蘭 竹西寛子自選短編集 (集英社文庫)
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