美しい嘘 ─『桜ほうさら(下)』(宮部みゆき)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 些細な、つまらぬことで嘘をついてはいけない。嘘は、一生つきとおそうと覚悟をきめたときだけにしておきなさい。

 (宮部みゆき、『桜ほうさら(下)』より)

 

 この言葉から思い出す物語は、オー・ヘンリーの『最後の一葉』。

 「あの葉が全部落ちたら、自分は死ぬ」と思い込んでいる肺炎患者のジョンジーのために、激しい風雨の中、絵筆をとり、煉瓦に一葉の蔦の葉を書いたベアマン。ベアマンは、無理がたたって2日後に亡くなってしまうが、その最後の一葉に励まされたジョンジーは、生きる希望を取り戻すという話。

 

 ベアマンの命がけの嘘=最後の一葉。

 私が「嘘は美しい」と感じた、最初の作品のような気がします。