滅びざる美しいもの ─『活動寫眞の女』(浅田次郎)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

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「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 大森貝塚を発見したアメリカ人モースは、明治初期に日本を訪れ、「貧乏人は存在するが、貧困は存在しない」と言いました。欧米では「幸福=裕福」なのに、日本ではそうではない。貧しい市井の人々が、子どもから人足、車夫に至るまで冗談を言い合っては笑い興じていたことに驚かされたそうです。

 

 翻って今は・・・。

 お金やブランド物を持っていると幸せ。有名企業に勤めていることがステイタス。携帯は最新のものを追い求める・・・。少なからず、私の中にもそういう思いがあります。自分自身の中からも、大事なものが抜けていっていると感じます。

 

 

 私の好きな作家・浅田次郎さんの言葉から。

 

 ・・・僕は美しいものを見た。

 打算と自己主張と、自分勝手な愛憎と社会批判とでごてごてに身を鎧った僕らが、それでも繁栄へとせり上がっていく醜い世の中で、僕はこの目でたしかに、滅びざる美しいものを見た。

 (浅田次郎、『活動寫眞の女』より)

 

 「美しいもの」・・・あなたは、何を想像しましたか。