歌人・穂村弘さんのユニークな恋愛講座。
例えば、こんな話が紹介されています。
大学生のカップルが初めてのデートで苺狩りに行きました。
入り口でお金を払うと小さな容器に入ったコンデンスミルクを渡されます。
サービスのように見えて、しかし、これは巧妙な罠だったのです。
苺は食べ放題、でもコンデンスミルクのおかわりは、駄目。
あまりにも小さなコンデンスミルクが尽きた時、二人の手は止まってしまいました。
絶体絶命。
ところが、その時、男の子が鞄の中からコンデンスミルクのチューブを取り出しました。
彼は、以前にも一度ここに来たことがあったのでしょう。
彼のビッグポイント!・・・と思いきや、実はそうはならなかったのです。
後日、その彼女さんが穂村さんに話したこと─
「鞄から出てきたチューブをみて、あたし、なんか、がっかりしちゃったんです。」
「どうして?」
「なんだ。この人、こうなるのを知ってたのかって」
「どういうこと?」
「うまく云えないんだけど、たぶん初めてのことをふたりで分け合いたかったんだと思う。たとえ、それが一緒に罠にかかることでも」
男の子は、彼なりに初デートと彼女のことを大切に思って、チューブを持ってきました。それなのに・・・。
穂村さんは、このエピソードの中に、恋愛の純粋さ、難しさ、残酷さ、面白さのすべてが含まれているように感じた、と言っています。
うーん、深い・・・。
穂村さんのこの本と、もう30年早く出会っていれば、私も、もっと恋愛上手になっていたのに・・・。