好きなことがあれば ─『一人っ子同盟』(重松清)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

「好きなものを訊かれて、ちゃんと答えられるうちは、人間、みんな、だいじょうぶだ」

「そうなの?」

「ああ、そうだ」

 父は自信たっぷりに言って、「つらいことや、しんどいことがあっても、だいじょうぶなんだよ、ほんとに」と念を押した。

 (重松清、『一人っ子同盟』より)

 

 「がんばれ」と励まされるより、「こうしたらいいよ」とアドバイスされるより、私は、このお父さんのような言葉に勇気づけられます。

 つらいことやしんどいことに立ち向かえることも大切でしょう。でも、そうできないときにも、「自分には、この時間がある。これをしていれば、いやなことが一瞬でも忘れられる」と思える何かが、自分を支えてくれます。