3年前に勤めていた職場の所長さんの話です。
どんな仕事でも、その場を任されることのプレッシャーは想像を超えるものだと思いますが、その例にもれず、所長さんの仕事も、精神的にも体力的にもまさに「激務」でした。それでも、その所長さんは、いつも笑顔で、私などが相談に行っても、忙しくてもいやな顔一つせず、親身になって応対してくれました。「自分も、こんなふうになりたい」と憧れ、所長さんに認めてもらいたくて、頑張っていたものでした。
ところがある日、突然訃報の連絡が入りました。その前日も元気なお姿を拝見していたところなので、まったく信じられませんでした。突然の死でした。
その後、私は異動し、その職場を離れたのですが、昨日、その職場に残っていた人と会い、こんな話を聞きました。
所長さんが亡くなった後、所長室の机や棚を整理していたら、1枚のメモ書きが出てきたそうです。
そのメモに書かれていた言葉。
逃げるな
悔やむな
苛立つな
おそらく所長さんは、苦しくなると、自分で書いたそのメモを見て、自身を奮い立たせていたのでしょう。
そして、気付きました。
所長さんは、持ち前のお人柄で、ああいう振る舞いができていたんじゃないということ。心の中では、すごく苦しみ悩みながら、本当に命を削りながら、私たちに優しく接してくれていたということ。
昨日、夜道を一人歩いて帰りながら、「所長さん、ぼくも頑張りますから、見守っていて下さいね」と何度もつぶやきました。