今日、3月11日。 ─『おもかげ復元師の震災絵日記』(笹原留似子)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 震災で亡くなった方を、生前と同じ表情、できるだけ微笑みをたたえたお顔にする。津波に巻き込まれていても、傷ついていても、できる限りの力を尽くして、残された家族と、いいお顔で最後のお別れができるようにする。それが「おもかげ復元師」の笹原留似子さんの仕事です。

 『おもかげ復元師の震災絵日記』は、笹原さんが心を込めて関わった家族の、別れの詩です

 

「パパ、さようなら・・・」

小さな娘さんの涙・・・。

「さようなら はさみしすぎる・・・

「またね!」にしようよ・・・」

ママがそう言ったね。

「パパ・・・

またね・・・。」

その言葉に

みんな泣いた。

私も・・・。

 

「こんなことになるなら、

あの朝、母さんと

ケンカするんじゃなかった。

「いつもありがとう」って、言えばよかった。」

息子さんが泣いた。

 

一瞬で

お父さんが

波にのまれた・・・。

「お父さん!」って

言ったら

「来るな!」って

お父さん叫びながら

波の中に

消えていったの・・・。

娘さんの涙は止まらない。

 

「イタズラばっかりしてよぉ・・・。

もっとイタズラして良いから

目を開けてくれ・・・。」

おばあちゃん、

涙が止まらなくなって、

お話出来なく

なっちゃった…。

6才 女の子

 

「マスカラを付けていたから

「高校生なのに!」って

怒ったことがあって・・・。

世界一きれいな

お化粧とマスカラを

お願いします・・・。」

お母さんから、

最後のプレゼント、

お化粧のお許し・・・。

 

「とうちゃん、

おりこうにするから

起きて・・・」

とうちゃんも、

息子さんのために

起きたいよって、

言ってるよ・・・。

 

 悲しい言葉。でも決して忘れてはならない言葉たち。