全3巻からなる『ダ・ヴィンチ・コード』の上巻です。
その時々の権力者たちは、キリスト教を自分の権力を増大させるために利用してきました。それゆえ、その教義はさまざまに解釈され、歪められたこともありました。
『ダ・ヴィンチ・コード』は、そんな権力に溺れる人間の醜さと、権力と無縁に生きる自然の美しさを対比させて描こうとしているのではないのかな、と感じました。
自然界におけるさまざまなものの比率は、驚くほどの正確さで「1.618(黄金比)」を示します。
例えば、ミツバチの巣におけるメスの数とオスの数の比。さらに、オウムガイの殻にも、ヒマワリの頭花にも、昆虫の体の分節にも、この黄金比が隠れているそうです。
古代人は、偶然を超えたこの値を、万物の創造主が定めたものにちがいないと考え、これを“神聖比率”と呼びました。
混沌とした世界の底には秩序が隠れている。太古の人々は黄金比を見出したとき、神の創りたもうた世界の基本原理に出くわしたと確信し、それゆえに自然を崇拝した。
(ダン・ブラウン、『ダ・ヴィンチ・コード(上)』より)
そして、人間の体にも黄金比が隠れていることを初めて実証したのが、レオナルド・ダ・ヴィンチでした。人知の及ばないことへの畏怖。決して侵してはならない秩序。人間もその一部であること。驕る人間へ警鐘を鳴らすダ・ヴィンチの声が聞こえてくるようです。
権力、対立、争い・・・。その中にあり、ひたすら自然と人間の真実を見つめようとしたダ・ヴィンチ。その真実を示す鍵が「ダ・ヴィンチ・コード(=ダ・ヴィンチの暗号)」にあり、全3巻を通じた大きなテーマになるのでは・・・。そんな予感がします。