「武士道」といえば、正々堂々とか倫理感とかいった言葉が思い浮かびます。
一方で、歴史を振り返ってみると、奇襲だとか、策略だとかいうこともよく起こっています。
一見、異なるこの二つのことを、磯田道史さんはこう説きます。
「平生道を踏み居る者」でなければ「事に臨みて策はできぬ者なり」と、平生、高い倫理のもとで暮らす人でなければ、戦いの策略はできないというのが西郷の考えで、この意味で、武士のだまし討ちと、武士道の倫理観は矛盾しないことになっていた。(磯田道史、『日本史の探偵手帳』より)
つまり、「普段きちんとしているからこそ、ここぞというときの策略が成功する。これは、武士道の精神に反するものではない。」ということなのでしょう。
しかし、ここで思い浮かぶのは、現代で起こっている様々な詐欺事件のようなもの。
ニュースを見ている立場からすれば、「なぜ騙されるの?」と思うのですが、きっと騙す人は、いかにも紳士的、良心的に見える人なのでしょう。それを信じきってしまったが故に、普段では決してひっかからないような罠にかかってしまうのではないでしょうか。
武士道をこんなふうに解釈していることが西郷さんに知られると、きっと私は「無礼者」と叱られるでしょう。でも、あながち間違ってはいないと思うのですが・・・。
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