本当に追い求めるべき道 ─『天の瞳 幼年編Ⅱ』(灰谷健次郎)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 レスリングの吉田沙保里さんは、5歳の時に出場した初試合で、優勝した男子が首にかけてもらう金メダルをみて、同じものをせがんだそうです。その時、父栄勝さんが言い聞かせた言葉。

 

「あれはがんばって強くなった人しかもらえない。スーパーやコンビニでは売っていない」

 

 とてもいい言葉だと思います。お金を稼ぐ仕事が立派な仕事、お金がなければ幸せは得られないという風潮の中、幼い頃からこのような言葉を与えられたからこそ、吉田選手は素晴らしい人となり得たのではないかと察します。

 

 灰谷健次郎さんの「天の瞳」の中で、少林寺拳法に打ち込む「あんちゃん」が語った言葉を思い出しました。

 

「どうせ終点のある楽しみより、金の力を借りない楽しみの方が奥が深いのんと違うか。オレはそっちの方へ行くことに決めた。29歳にして人生悟った」

  (灰谷健次郎、『天の瞳 幼年編Ⅱ』より)

 

 高級車に乗ったり、夜な夜な札びらを切ったりする暮らしには、確かに憧れるところもある。でも、そんな暮らしは長続きしないでしょうし、いずれ空しさを感じるでしょう。そうではないところに、本当に求めるべき道がある。

 どうあがいても、金銭的に裕福な暮らしを送れそうもない私は、こんな言葉に励まされるのでした。