ぬこさんのブログで知った本です。
皇后・美智子様の“積読本”としても知られている本です。
冷静沈着で、知的で、まるであらゆることをすべて見通しているような、優秀な執事・ジーヴズ。お仕えしているバーティの身の回りに起こるどんな難題もそつなく解決していきます。この印象が、最終話を読むまで続きました。
ところが最終話のみ、ジーヴズの視点から出来事が描かれています。とたんに、ジーヴズの動揺や迷いなど人間らしさが垣間見え、かえってジーヴズの魅力が増しました。
「この言葉を聞いて、ぎくりと思い当たることがありました。」
「私は動揺を隠しましたが、平静な態度を保つのは一仕事でした。」
「大好きなウースター様(※バーティのこと)のことですから、お顔を見るとくじけそうな気持ちになりました。」
それまで、まるでAIのように的確に判断していたジーヴズの内面は、こうだったのか・・・と知ったとき、ある文章を思い出しました。
鬼って巨体。勝てるわけないよ。鬼ヶ島で桃太郎はおじけづく。それでもお供の犬と猿、キジの果敢さを見て、遅れて刀を振りあげる─。『桃太郎が語る桃太郎』という絵本を読む。弱気な主人公像が新鮮だ。
おなじみの昔話を主役の気持ちで描き直す。「1人称童話」シリーズの第1作だ。少し計算高い「シンデレラ」、飽き性の「浦島太郎」と続編も出た。「他者の気持ちをくむ格好の教材になる」と評価され、今年のグッドデザイン金賞に輝いた。
(朝日新聞、「天声人語」(2018.12.25)より)
もう一度、『ジーヴズの事件簿』を読み返したら、一回目では見えなかったジーヴズの内面が想像できそうです。読みの楽しさ倍増です。