道草を食い、空を仰ぎ、やきもきする ─『「言葉にできる」は武器になる』(梅田悟司)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

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「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 昨日、浅田次郎さんの『ブラック オア ホワイト』から文章を引きながら、思い出した言葉があります。

 

 時間に追われることで、道草を食う、ことがなくなった。

 スマートフォンばかりを見ているため、空を仰ぐ、ことがなくなった。

 最愛の人といつでも連絡が取れるので、やきもきする、ことがなくなった。

  (梅田悟司、『「言葉にできる」は武器になる。』)

 

 情報が、テクノロジーが、溢れるほどの新語(名詞)を生み出す傍ら、経験(動詞)が貧弱になっていきます。「道草を食う」「空を仰ぐ」「やきもきする」という言葉は、人にそれぞれの物語を思い起こさせます。なんと豊かな言葉たちでしょう。

 

 そして、私の心は、どうしてもミカリュス・ブルガリスさんの言葉に帰っていくのでした。

 

 これ以上、何を所有する必要があるのでしょうか。所有するのではなく、経験することを楽しみたくて私たちはこの地球にやってきたのですから。

  (ミカリュス・ブルガリスさんの5月9日のブログから)