青い空と白い雲のような心で ─『ルラルさんのだいくしごと』(いとうひろし)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 雨もりを直すために、はしごをかけて、屋根に上ったルラルさん。

 ところが、屋根から降りようとすると、はしごが倒れていて降りられません。

「おーい、だれか いないかーい。」

 ルラルさんが呼ぶと、カメさんや、ねこさんやわにさんや、たくさんの動物がやってきました。

 でも、動物たちは、はしごを見て、

「なんだか きしゃみたいだね。」

「きしゃだ。きしゃだ。」

とはしゃぎながら、

「いってきまーす。」

 庭をぬけて、向こうの林に消えていきます。

 ルラルさんは、屋根に寝転がって、のんびりとみんなが帰ってくるのを待つことにしました。

 

 『ルラルさんのだいくしごと』(いとうひろし、ポプラ社)という絵本です。

 ルラルさんが屋根の上で動物たちの帰りを待つシーンでは、見開き3ページにわたり、ただただ青い空と、白い雲の絵が広がっています。

 困るでもなく、いらいらするのでもなく、(こうやって、そらを ながめているのも わるくない)と思うルラルさんです。

 

 そして、西の空が赤く染まるころ、帰ってきた動物たちが

「ぼくらのきしゃ、はやしを ぬけて、おかに のぼり、かわの ところまで いったんだよ。」

と笑顔で話すのを聞き、

「それは よかったね。」

と笑いながら答えます。

 

 こんなふうに人を許せるかな。

 許せてこれたかな。

 許せるようになるかな。

 

 見開き3ページの青い空を眺めながら、そんなことを考えました。