工藤直子さんの言葉から ―「みなさん」は、生きとし生けるものみんな― | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 もう10年以上前になります。

 詩人の工藤直子さんとお会いして、お話をする機会がありました。

 私の地元の小さな炭火焼の店でした。

 工藤さんは、陽気で、気さくで、子どもの心をもったままでいられる人。そして、素敵な大人の雰囲気を纏った人でした。

 例えば、料理が出されるたびに、

「この串、とってもおいしいです。」

「この湯豆腐もおいしいです。」

と、お店の人に声をかけていました。

 

 私と知人とで、「アユの友釣り」について

「しかけとなるアユがかわいそう。」

「でもアユは年魚だから、結局1年の命なんだよ。」

と話していたところ、工藤さんが、

 

「だいたい、みなさん、そうですよね。」

 
とおっしゃいました。
 私たちは、「えっ⁉ 自分もあと1年の命なのか?」と、ドキッとしたのですが、よく話をうかがうと、アユもサケも、魚たちには1年きりの命のものが多いということでした。魚のことを「みなさん」と呼ぶ、その感性に、深く感心させられたものでした。
 
 工藤さんといえば、『のはらうた』が有名ですが、自在に動物たちの視点に立てるのは、工藤さんにとっての動物たちは友達であり、身近な住人であり、常に同じものを見て感じているからでしょう。