久々のピッチャーとそれについての考察 | 基本的には見た目が変な植物が好きです。

基本的には見た目が変な植物が好きです。

食虫植物、エアープランツ、多肉植物などの栽培記録みたいなものですね。


食虫植物の『ネペンテス・トランカータ』が久々にピッチャーを付けました。

以前このブログで御紹介したトランカータとは別の株で、赤系ですがルーツの分からない無銘の個体です。

この株は購入後すぐに全てのピッチャーが枯れてしまい長いこと活動停止状態になっていたのですが、最近になりようやく新しいピッチャーを付けてくれました。

ピッチャーを失った原因は恐らく環境の変化でしょうが、トランカータは強健種なので当初は大丈夫だろうと特に気にもしていませんでした。

しかし他の株が元気に育って行く中この株だけはほとんど動きがなく、まるで生ける屍と化してしまったかのように沈黙…

まぁ辛うじて生育はしていましたがその成長速度は異常なほどに遅く、他のトランカータが葉を2枚展開している間にコイツはまだ1枚目の半分くらいしか展開していないというような、本当にどうしようもないグズでした。

ピッチャーが枯れたくらいでは大して生育に影響はないだろうと軽視していましたが、まさかこんなにもピッチャーが大事なものだったとは。

今回初めて気付いたのですがネペンテスのピッチャーというのは獲物を捕らえる罠であると同時に、大切な貯水器官でもあるんですね。

考えてみればトランカータの根は見た目からは想像も出来ないくらい少なく、その巨体を根からの水分補給だけで支えているとは到底思えません。

トランカータだけでなく他の着生種に於いても根が貧弱なものが多く、そのような種はピッチャーからの水分供給の割合がかなり大きいものと思われます。

むしろ着生種だけでなくほとんどのネペンテスは生育に必要な水分の多くをピッチャーから吸収し、根はピッチャーが枯れた場合の補助的な役割をしているのではないか?と。

自生地のネペンテスは茎を10mもの長さにまで伸ばすらしいですが、そのような大きな植物体を支えるにはネペンテスの根はあまりにも貧弱すぎると思うのです。

根とピッチャー、ダブルの給水システムが機能して初めて本来の生育を見せてくれるのではないでしょうか。

その証拠と言っては何ですが、古くなったピッチャーは上半分を枯らしても下半分は長い間残っていますよね。

これって古くなったことでピッチャーがくたびれただけかと思っていたのですが、実はネペンテス自身が意図的にそうしているようにも思えるのです。

ネペンテスのピッチャーは蓋から蜜を出して虫を誘引し、滑りやすくかつ返しの付いた襟で確実に獲物を仕留めます。
つまりネペンテスの武器ってピッチャーの上半分に集中してるんですよね。

新しいピッチャーは椀子そばの如く次々に虫を食べますが、あまり虫が入りすぎると食べ過ぎによりピッチャーが腐ってしまいます。

大事な貯水器官でもあるピッチャーを食べ過ぎなんて間抜けな理由で枯らしてしまってはネペンテスの名が泣きます。

それを防ぐために敢て武器の部分だけを枯らし、ピッチャーに虫が入り過ぎるのを回避しているのではないでしょうか。

なのでネペンテスのピッチャーは単なる捕虫器官ではなく水分を補う根の代わりとしての役割も相当担っているのではないか、と僕は考察します。

今回のトランカータの脱力はピッチャーが全枯れしたことにより給水システムの大半を失い、根からの補助的な水分補給しか出来なくなったことが原因だと思いますね。

環境の変化などで簡単に枯れてしまうピッチャーですが、ネペンテスにとってピッチャーというのは僕らが思っているよりもずっと大切なものなんだと思います。

角度を変えて、もう一枚。

まだ半開きなので未完成品です。
ってかなんで襟がちょっと割れてるの?めっちゃ気になるんですけど…