■三方良し

近江商人の教えに
「三方良し」
というのがあります。

その商売が
・自分に良し
・相手に良し
・世間に良し
となっていることを
大切にする、ということです。

これは勇気についても同様です。

その勇気が
・自分に良し
・相手に良し
・共同体に良し
となっていることが
大切になります。



■適切に使えると”まあるく”なる

アルフレッド・アドラーは
勇気とは
”困難に立ち向かう活力”
であると言っています。

困難で出会ったときに
勇気を使うと
その困難に立ち向かえる、

反対に
勇気を使わないと
その困難を避ける、
ということです。

その困難とは
今の自分が持つ課題であり、
それを克服することで
得られる成果物がある、
ということです。

そのため勇気を使うことは
「良いこと」とされています。

しかし、
その困難の克服で得られる成果物が
「三方良し」であれば
まあるく収まる感じで
”すればするほどしあわせが増える”
となってすばらしいですが、

「三方良し」でない場合は
”する度に誰かが犠牲になる”
となるため、
勇気を使ってはいても
まあるく収まらない感じになります。



例えば
一緒に仕事をする仲間の
鼻毛が見えていたとします。

その人がそのままお客さんに会うと
鼻毛が見えて恥ずかしい思いを
するかもしれません。

さらにそれを見たお客さんが
自分たちの職場に対して
「誰も気づかないのか」と
失望してしまうかもしれません。

でも
「鼻毛出てるよ」なんて言うと
相手の怒りを買ってしまうかも
しれません。

伝えようとしても
困難を感じます。

言わない場合は
以下のような感じになるでしょう。

・自分に良し〇
→怒りを買わない、などの
面倒ごとを抱え込まないので
自分は平和にすごせる。

・相手に良し×
→鼻毛に気づけずに
恥ずかしい思いをする。

・世間に良し×
→鼻毛が出てる人が
働いてるところ、と評価される。

お客さんが寛大な人で
「鼻から何か覗いてますよ」
なんて言ってくれる人なら良いですが
お客さんも伝えようとすると
同じような困難を感じるでしょう。



そして、伝える場合です。

困難に感じるのは
自分が伝えたときに
相手が恥ずかしい思いを
”させられた”と思って
自分に怒りを向けてくるかも
しれないことです。

でも、
それはその人の課題であって
自分の課題ではないので
自分は操作できません。

自分が操作できるのは
自分の課題である
「伝えるか、伝えないか」です。

相手も鼻毛が見える状態で
お客さんに会いたくはないでしょう。

そこに寄りそう感じで
誠実に伝えることで
相手の受ける衝撃も
最小限で済みます。

そうした配慮をすれば
伝えることの困難を
乗り越えるのは簡単になります。

・自分に良し〇
→相手の役に立つ自分は
自分の好きな自分。

・相手に良し〇
→言われてイヤだけど
お客さんに見られるよりは
ずっとマシだから、助かる。

・世間に良し〇
→鼻毛を気にせずに
利用できることは
お客さんにも職場にも良いこと。

こんなふうに
勇気を使えると
”すればするほどしあわせが増える”
のです。

アドラーは
こんな使い方を
「生きるのに役立つ道」と
言っています。



■犠牲は出ない

勇気を使って
犠牲が出ないのが
「生きるのに役に立つ道」に
進むことです。

誰かに犠牲が出るような
勇気の使い方は
おかしい使い方です。

すなわち
「生きるのに役に立たない道」です。

例えば
接客するときに
お客さんが自分の身体を
触る必要もないのに
触ってくる、なんて場合。

お客さんに触られて
うれしいのなら何も問題ありませんが、

お客さんに触られて
イヤなら、それは自分に犠牲が出ています。

”触られる”という困難に
勇気を使って立ち向かい、
接客が終わるまで我慢すると
次のような感じです。

・自分に良し×
→自分に犠牲が出ている。

・相手に良し〇
→触ると利益があるから
触ってくるので相手限定で〇です。

・世間に良し×
→世間的にダメな行為。
自分の職場としても
それは看過できない行為だけど
自分が言わない限り感知されないので
×だけど、?ともいえます。
?は良いも悪いもないことです。

「自分さえ我慢すれば
お客さんは喜んで
また来てくれるから、
自分は善いことしてる」
なんて思っても
確実に自分には犠牲が出ていて、
それが繰り返される度に
犠牲は重なっていきます。

なので
”触られる”という困難に
勇気を使うのは
間違った使い方です。

この場合は
自分に犠牲を出さない状況を
ととのえることに
勇気を使うべきです。

なので
「お客さんに
自分に身体に触れないように
要請する」とか

「職場の上司に相談する」とかに
勇気を使うことになるでしょう。




お読みいただき、
ありがとうございます。

プロコーチ9年目、常楽でした。



無理な犠牲を出さない境界
自己犠牲で自分の重要度を高める道は、苦しい