「私は痛いのが一番怖いから、こっちを選ぶわね◯◯さん(私の名前)」




主治医の先生が

義母の意思を尊重して下さり

緩和ケア病棟への入院を切り出した直後

付き添いで診察室に一緒にいた私に

義母から出た言葉だ










抗がん剤が変わり、急に腹水が溜まり出した




正直、せめて来年のお正月を迎えられるといな…

と思っていた矢先



「もうそんなに沢山の時間はありませんよ」



と、遠回しに宣告されてしまった




緩和ケア病棟という事は

積極的治療を断念して

余生を自由に過ごすということ




私みたいな素人でも

義母の命がそんなに長くないと悟る




その話を先生から聞いている

義母はというと




「先生、是非その病棟にして下さい

私は痛いのは嫌だし

色んな人に迷惑をかける方が辛い

私は早くから覚悟はできております!」



と、先生と笑いながら話している




先生は思わず義母の膝を

トントンと叩く




「◯◯さん(私の名前)

抜けてしまって少し生えて来た髪の毛が

あと5センチ伸びたら良かったけど

それも叶わんようやね…

あっちで待ってるお父さんが

私って気づいてくれるかなぁ」



「でもこれで

息子やら◯◯さん(私)やら、近所の人やらに

迷惑をかけんで済むから

良しとするか〜」



と、また豪快に笑う




本当はショックを受けたと思う

本当は恐れが出たと思う

本当は何ともいえない複雑な胸中だと思う




「お義母さん

難しいかもしれないけど

これからは自分が楽になる事だけ考えて

過ごして下さいね」



と言うのが精一杯だった




そして

診察帰りの車中で

義母が笑うタイミングで

一緒に沢山笑った




家に帰りつき

冷蔵庫で冷えていたスイカを

「美味しいね〜美味しいね〜生き返るね〜」

と言いながら2人で食べた




いつ会っても

常にこういう道を歩いているような

爽やかな風を感じる可愛い笑顔と

いつも沢山の人に囲まれている義母



「私は幸せ者!

こんなに沢山の人に助けられて生きて来たんだ

っていう事に

心の底から気づいたわ〜私は運が良い!」



これを一番近くで聞いている私が

一番幸せ者だ





今日も読んで下さり

ありがとうございましたブーケ1