スペインは今日、二日酔いのような月曜の朝を迎えています。
昨日は15時からウィンブルドン決勝、21時からEURO決勝と、スペインはスペイン人アスリートの応援で大忙しでした。私の自宅前のビーチにも、市が大画面を設置しDJを雇って深夜まで盛り上がるなど、国中が歓喜に沸いた日曜日となりました。
(ウィンブルドン決勝では、アルカラス選手が優勝!)
EUROに関していえば、今大会のスペイン代表はこれまでにないくらいメディア的に地味な印象ですが、だからなのか、組織的にとても良いチームに仕上がっていたと感じます。
史上初のEURO4冠。7戦全勝優勝。さらにMoM、YPT、得点王、MVPと全個人賞をスペイン勢が頂きました。
11歳からビジャレアルのアカデミー生として10年間育ってきた私たちのバエナ選手は、残念ながら今大会での出場はほぼありませんでしたが、これから大会をハシゴしてパリ五輪に臨みます!
また、今大会驚異的なパフォーマンスでMVPに輝いたロドリ(RODRIGO)も、2014年に着手した私たちの指導改革の中、最も濃厚にプロセスを歩んだアカデミー生のひとりです。
当時、120名の指導者が自分たちの指導方法やアプローチを抜本的に見直し、「10年後の彼らの姿に責任を持とう」 そう誓い合い取り組んできた大改革。
「優勝」という競技成果が指標ではもちろんありませんが、私たちが意識的にそして意図して取り組んだことが、多少なりとも彼らの豊かな学習に繋がっただろうか。ちょっぴり「こそば嬉しい」気持ちです。
この10年、私たちも、選手の成長や育成成果を測るための指標開発に必死になっていた時期があります。様々な評価制度を検討、トライ、エラーを繰り返した挙句たどり着いたのは、「成長支援における評価は自己満足で良いんじゃない?」でした。
どんな評価制度にも拭えぬ違和感が残り「こたえ」が見いだせない時期を過ごしましたが、無理やり評価をするのではなく、個々のパーソナルゴールを設定しながら、個別最適な伴走支援を行い、これらのプロセスを鮮明にログに記録していくこと。「これ以上価値あるアスリートの成長履歴は無いだろう!」との思いに至ったためです。
今大会のスペイン代表は、下は16歳、上は38歳とチーム内でも年齢幅はあるものの、2008年と2012年大会でユーロ2連覇した当時の選手たちとは、育ってきた学習環境が随分と異なる今大会の選手たち。
時代が変わっても、社会や環境が変容しても、柔軟に指導現場が対応してきたこと。多様なフットボール概念が生まれる自治州制度という特性。国境を越え国外でチャレンジする意識、EU統合・スカウティング・移民といったインバウンドから得る学び、これらの人的・知的流動性の高まりから競争力と学習機会の多様化など、スペインは、こうした社会的変動にも大きく影響を受けながらスポーツが発展しているのではないだろうか。そんなことを考えています。
【再掲】ポゼッションサッカーの終焉? ~スペインは繋ぐサッカーをやめたのか?~
また、エース&キャプテンのモラタ選手が試合後に、「イニエスタ とボージャンの助けがなかったら、僕はいまここに居ない。心から感謝している」と話していたのが印象的でした。
イニエスタ とボージャンは、ヴィッセル神戸でもプレーした選手ですが、両者とも、ある日突然起き上がれないほどの鬱を患った経緯があります。
その二人に謝辞を述べたことで、これまでのモラタ選手の歯車の合わない、空回りのプレーが鬱という苦しい状況からきていることを国民は知りましたし、それでも監督が彼を起用し続けたことの意味。
本当の意味で「強いチーム」を作るとは、「最もコンディションが良い好調な選手を11名並べる」ということではないのかもしれませんね。