クロワッサンで朝食を~ジャンヌ・モロー的おんなの生き方 | 本音で生きる人生の愉しみ方~ライフナビゲーション

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銀座は大人の街と昔は云われていたようだが
昨今は若者も家族連れも気軽に入れるお店も増えてきたのだろうか?

そんな銀座の和光裏通りにシネスイッチ銀座という映画館がある。

いわゆるハリウッドの大作などは上映されないが
小粒の“キラリ”と光る映画がかかっている事が多い。

先日、そこで友人と観たのがクロワッサンで朝食を

往年の大女優、ジャンヌ・モローが主演のせいか
行った日は、40代~70代くらいまでの女性達が長打の列を成して
チケット販売を待っていた!

エストニア出身の中年の女性、アンヌ
彼女は痴呆の母親を亡くし、介護から解放されたものの、これからどう生きていけばいいかを考えあぐねている。
雪の降る田舎町、自身が離婚して既に子供達も成人し、母親と2人きりの生活だったアンヌ
そこへ、かつて働いていた老人ホームの上司から、パリでとある富裕な老婦人の面倒を見る気はないかという1本の電話をもらう。
アンヌは若い頃にフランス語を学び、少しならば話すことができるのだ。

だが、彼女はパリなど訪れたことがない。
そんな場所で自分ひとりでやっていけるのか?
迷う彼女に、娘は言う「パリなんて素敵じゃないの!行ってくれば?」と。

そして彼女は一人、故郷を後にしてパリに旅立つ。

空港には彼女と同じくらいの年の男性が迎えに来てくれている。
(この俳優がジャン・レノにとても良く似ている!!)
連れて行かれたのは、瀟洒な調度品を設えたアパルトマン
だがその日、アンヌは肝心のお世話をする女性フリーダには会えないまま。
何故なら既に眠ってしまっていたから。

翌朝、朝食を作りフリーダの部屋のベッドに運んだアンヌに対し
フリーダが冷たく拒否するところから2人の物語が始まる

同じエストニア出身だというフリーダ
優雅で洗練された身のこなしだが、老いは彼女を確実に包み
辛らつな口調と尊大な振る舞いに、手伝いの女性達誰も居つかず
豪華なアパルトマンには、ステファンというその男性以外訪れる人はいない

アンヌは雇い主であるフリーダを理解しようと勤めるが
中々一筋縄ではいかない。
ため息と共に一日が終わると、フリーダが寝静まるのを確かめて
アンヌは夜のパリの街を散歩する

洒落たショーウィンドウを眺め
遅くにカフェで集う人を見つめ
夜の街を歩きなれた靴を履いて、散歩を楽しむ


故郷エストニアとは違う都会の夜
孤独はアンヌにとって友達のようでもあり、そこに淋しさの表情は見られない

やがて気難しいフリーダも
淡々と、だが愛情深く世話を続けるアンヌに少しずつ心を開いていく

そんな矢先、フリーダのためにと思ってアンヌがした事により
2人の間に亀裂が入り・・・

と、ここから先は実際に映画をご覧になられた方が良いだろう


老いたとはいえ、いつも女性であることを毅然と周囲に判らせるフリーダ
十分に美しい女性であるのに、それを忘れてしまったかのようなアンヌ
フリーダの息子のような年頃でもあるが、その関係にどこか“男と女”を感じさせるステファン

この3人の大人が織り成す人間同士の過去から現在への関わり
交差した人生と交差するかもしれない人生


フリーダを演じるジャンヌ・モローは85歳
円熟という言葉には収まりきらない魅力を湛えた大女優である。

女はいくつになっても女を忘れない
というが、この人は雄雄しく凛々しく、それでいてどこまでも女性なのだ

後半になってアンヌがハイヒールを履いて夜のパリを歩くシーンがある
その時のアンヌの脚の美しさにハッとさせられた

いつも履いている頑丈なブーツではなく
華奢なハイヒールを履いて颯爽と歩く彼女は
もうすっかりパリという街に溶けこんだようにみえた


年を重ね、例え鏡を残酷だと思い始めても、老いを受け入れる
平凡にみえた自分の日常に持ち込まれた、小さな“変化”を受け入れる


フリーダもアンヌもそうして歩みよっていくように見えた


独りきりで生きているように思っても
必ずどこかで誰かと関わりを持って生きる社会
その中で生まれるドラマ


ふわりとしたタッチで描かれるこの映画は
監督自身の母親の体験が元になっているという


大人の女性達に是非、観てもらいたい映画だったドキドキ



 ここで一句

   夜の街 さざめくしじまに身をまかせ
         下ろした髪であなたに逢いたい




$大人のギャザリング@田村由香理の”繋がる”を楽しもう!-クロワッサンで朝食を~ジャンヌ・モロー