中学生の部は3冊です
3冊中2冊が職業に関する話です。
『ノクツドウライオウ
靴ノ往来堂』
著:佐藤まどか(あすなろ書房)
この本は、四代続いているオーダーメイドの靴屋さんが舞台です。
四代目の孫にあたる女の子が主人公。
効率は悪いけど履く人に合わせて、
自然にも優しい皮を使った靴を
半年から一年もかけて作るマエストロのおじいちゃん、
オシャレな靴をデザインし漠然と五代目になることを考えている女の子。
靴作りへの真摯な姿勢だけでなく、
孫の女の子や、弟子入りしたいとやってきた男の子にも
厳しさと思いやりに溢れた態度で接します。
弟子入りした男の子は、同じクラスの苦手な男の子で…
進路、職業観、家庭環境、親子関係、街の開発や効率化、伝統を守ること、
口には出さなくても人には抱えていることがあるということなど、
ポイントになる点はたくさんあります。
ただ、ファッション用語もかなり出てくるので
興味がない人は読み始めに少し苦労するかもしれません
『アフリカで、バッグの会社はじめました〜寄り道多め仲本千津の進んできた道』
江口絵理:著(さ・え・ら書房)
個人的には、今年の課題図書の中で一番好きな本です
「人の命を救いたい」と医師を目指していた女の子が、
壁にぶつかったり「常識」に捉われたりしながら、
自分の道を見つけていきます。
決して上手くいくことばかりではなくて、
でも棚ぼたのようなラッキーもあり、
「事実は小説よりも奇なり」の言葉通り、
読んでいて先が気になる展開でした。
最後に明かされる家族の話も心に響きました
自分はどんな生き方がしたい?
外国で働くって? ビジネスとは? 人として大切なこととは?
など、いろんな問いを見つけられそうな本です。
『希望のひとしずく』
キース・カラブレーゼ:著/代田亜香子:訳
(理論社)
願いが叶うという言い伝えのある古い井戸。
願いごとをしにくる人の話を聞いてしまうことになった3人の中学生を巡る物語です。
3人それぞれの個性の違いや、住んでいる場所の差。
置かれている立場や経済的事情など、
社会への関心を広げるきっかけがたくさん散りばめられています。
主人公の亡くなったおじいさんの遺言や、
昔の事件も絡んでミステリーっぽい側面も。
その分、登場人物も多く、語り手自体も次々変わるので、
本を読み慣れてないお子さんは苦労するかも
読書家で、ありきたりの話やテーマがはっきりしてる本はつまらない、
と思ってるお子さんには読みごたえがあると思います。
どんな視点から切り込んでいくか
きっとオリジナリティに富む感想文が書けると思います。
例年、中学生は課題図書で書くお子さんは少ないのですが、
今年はいつも以上にこの3冊がしっくり来る子は限られているだろうと思いました。
将来の仕事や生き方、社会とどう関わっていくかを考えるには、
『ノクツドウライオウ』も『アフリカで~』も十分です。
ただ、いわゆる「感想」だけでなく
自分の思いと照らし合わせ、本を読んでどんな影響を受けたか、
または自分の明確な思いがあって、影響を受けなかったか。
中学生は1600~2000字を求められる学校が多いので、
(そのため、あらすじをタラタラ書いてしまう子が多いです)
本の内容を踏まえたうえで自分の「作文」にしてしまえるかどうか。
課題図書で書かなくていいなら、そんなふうに展開できる本を選ぶことも大事だと思います。