こんな意見文が書けるには? | 「国語教室 Hey Ho」安藤友里のブログ

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「国語教室 Hey Ho」代表の安藤が、思ったこと・考えたことを綴ります。「文章力をつける」教室を開いているのだから、自分も文章を鍛えないと、と思って書いてます。

前回は小学5年生から

一般化して書くことを意識するといい↓

 

 

という話でした。

 

では、中学生になるとどんな作文になるのかはてなマーク

中学3年生が書いた意見文を紹介します。

 

模倣の大切さ

 

技術後進国だった日本は、欧米に追いつこうとキャッチアップを続けた結果、

三〇年で追いつき、追い越してしまった。

この驚異的なキャッチアップを可能にしたのは、

最新技術を受け入れ、消化するための潜在能力が日本にあったということだ。

しかし、現代の日本人は「もの真似」と批判された結果コンプレックスに陥っている。

だが、古くから日本人には、真似て学ぶことが独創性を発揮する大前提とする歴史がある。

日本人は、もの真似上手と言われても、コンプレックスを抱く必要はないのだ。

 

私は、模倣の能力を大切にして、積極的に使って生きていきたい。

そのための方法としては、まず、よい手本を探すことだ。

かつて戦車ゲームで初心者だった頃、何とかして上手くなろうと四苦八苦し、

自分で戦法をいろいろ考えていた。

しかし、ユーチューブで上手い人のプレイ動画を見つけ、

その人が動画でやっていることを、一つ一つ見よう見まねでやっていると、

上手くプレイできるようになっていった。

結果的に自分で雑な戦法を考えるより、

数十倍速く、数倍は有効であろう戦法を身につけることができた。

そのおかげで今はそれより上の、

敵の動きを予測して戦う戦い方を研究できている。

自分で一からやっていくことも大事だが、それだとあまりに時間がかかり過ぎたり、質が低かったりする。

より上の段階に進むためにも、

よい手本を見つけて確実に模倣していくことが大切なのだ。

 

また、模倣することは大切なことだという認識をもつという方法もある。

明治時代に開国した日本は、国家方針としてこれまでの独自路線ではなく、

欧化政策で積極的に欧米の文化、技術を模倣し取り入れる道を選んだ。

結果、鉄道はイギリス、政治制度はドイツ、電信はアメリカと、

ありとあらゆる物を抵抗なく取り入れて行き、近代化を進めていった。

民間でもザンギリ頭や新聞など都市部では特に欧化していった。

そのおかげで、大正時代には列強の一員に数えられるまでになった。

当時の日本は、模倣を猿真似、悪いことと捉えず、

逆に重要なことだと国全体で推進していった。

その結果大きく発展し、さらに基の日本の文化技術と混ざって独自の文化も創り出した。

模倣を大切にする意識は、その後の発展のためにも必至なのだ。

 

確かに、模倣ばかりしていては進歩がない。

しかし、「辞書のような人間になることではなく、辞書をうまく使えるような人間になることが勉強の目的である」という名言があるように、

模倣したことを上手く使いこなしていけば

より早く進歩していくことができる。

だから私は模倣の能力を大切にして生きていきたいのだ。

 

斜体の部分は課題文の要約です。

 

いかがでしょうか?

「模倣」がテーマの文章から意見文を書け、と言われて

身近なゲームの話と、学校で習った明治維新の話を、

こんなふうに例として挙げられますか?

中学生ならではの題材選びができ、それを説明できる力が

この生徒さんはしっかり身に付いているわけです。

 

確か、中学1年生の終わり頃から通い始めたのだったと思うのですが、

彼が力を付けたのは、やはり取り組み方に要因があると思います。

まず、しっかり課題文を読んでくること。

一段落目の要約を、ほとんどの子がヒント(解説)に書いてあることに

少し色を付ける程度なのに、毎回自力できちんとまとめます。

(中には全部写すお子さんもいます笑。

 ただ、それでも長い目で見れば力は付きます)

そのため要約だけで1時間近くかかることもあります。

その後、自分の意見を決め、

説得力のある話題を提示するのですが、

それも私の拙いヒントをそのまま使うことは決してせずに

自分なりの経験や知識を総動員して書いています。

 

……ということは?

「書く力」といってもテクニックではなく

題材を自分の中から見つけて来られるかどうか。

それを言葉にしていく我慢強さがあるかどうか。

もちろん、そのためには幅広い経験や知識も必要です。

同時に、じっくり考えることを面倒くさがらない生活習慣が身についているかどうかなのです。

 

とても長くなってしまったので、

今回はここまでで、次回、彼のもう一つの作品を紹介しながら

続きを書きたいと思います。