3巻の内容に連関しているのでリンクを一緒に上げます。
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ローランの心の中で不吉な想像が浮かんできていた。あのものは本当にただの役立たずかも知れない。2年前、ショモン屋敷での事件の直後、自分は公女に衝動的な助言をしたことがあった。17歳とは顔だけイケメンのバカも会ってみて、バカすぎると尻を蹴ってしまって。。。

まさかこの者が… 顔だけイケメンのバカ?

定量的価値判断を下すため、ローランはマキシミンの全身に注意深く目を通した。もちろん今まで同行したから見る機会は散々あったが、今回は基準が違った。だから理性的魅力という観点から、そこまで美人か?うちの公女様が忙しい中、他の仕事を後に回しながら追った後この者が攫われるとネニャプルと協力し側近たちを全員動員して助けてやれと仰るほど?

そこまでして助けたこの者をただ自由に行かすように仰った理由は… この者が公女様の思いに答えたくれなくて?

「。。。」

そんなことを考えながら見たためか、何一つ気に入るところが無かった。自分で切って失敗したままで放置したような髪型、疲れでざらざらしい顔、一時は高級だったようなシャツとズボンには皺が激しくて、靴に無理矢理足を突っ込んでなかったのが幸いだ。一目惚れするような美男子でも許せるかどうかなのに、美男子どころか一生容貌を整えてみたことも無いようなこの格好とは。そりゃ控室に突っ込まれけた直後は引きずり出されたので、洗顔の一度もする暇がなかったからだったが、ローランはそんな事情までは知らなかった。

それさえネニャプルのころに比べてぼろいコートでもなくなった姿だったが、ローランは得体不明の呼吸困難を感じながら自分の言ったことを後悔した。助言だって誰にも出来るものではなかった。公女がどれほど整った人たちと宮廷の礼儀にうんざりしたとしても、ここまで常識的に納得のいかない美的感覚の人間を選ぶことまではないじゃないか。