*ネタバレ苦手な方は避けて下さい!

 

 

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④ すでに戦争みたいな審議会内

 

 

261p

「あは、その話が出ると思っていました。軍人の皆さんが武器を愛する心は解りますけど、これはそのような問題ではありません。そしてその点に関する説明のため1時間ほど掛けて魔法の式を使ってもいいですが、それがお望みなのか解らないので」


ピスカー副司令官は負けずに返した。


「聞いたところ、教授は薬草学のマスターだろう?果たして本当にそのような式が使える?」


驚くほどの侮辱に周りの魔法使いたちが慌てて騒いだ。副司令官はレ厶での地位があるから一カ所の魔法学校の教授などは無視してもいいと思うのか?けどここは魔法使いたちの会議の場である。
ロレディーン教授は少しの間、彼を睨んだ後言った。


「気になりますか?では私はそれを使って見せるし、副司令官はシンぼリオンに賄賂授受を通して軍事作戦を行おうとしたのを認めるし、そうすると計算が合いましょう」


瞬間、副司令官は後頭部を殴られたみたいにぼっとしてから、顔をしかめて怒声を上げた。


「とんだ。。。妄言だ!」

(中略)

「そうだ!あいつ!あいつのせいだ!」


マキシミンはテーブルに手を付いたまま、呆れて首を傾げながら副司令官を見上げた。なんでまた俺なんだよ。もう俺が天地創造までしたことになるんじゃない?


「君が大魔法使いジュスピアンと一緒に歩き回りながら騒ぎを起こしたことは知っている!その後始末のために。。。軍人たちがキップの外に出たのだ。その廃虚から出た怪し人形!それのせいで急に変種プシキが群れを作っただろう!お前たちが人形を触ったせいでそんな事態になったことを知らないとでも思ったか!」


マキシミンは目を丸く開けてそれを聞いていた。ジュスピアンと自分が友だち同士でもなったように一緒にどこかで騒いだなんて、何のことか最初は理解できなかったけどもうすぐある場面を思い出した。ジュスピアンと彼が二人きりでどこか行ったことは一度しかない。
じゃ騒ぎって何だ?もしかしてその飛んでくる鉄片たちをジュスピアンが消してたこと?怪しい人形は何だ?


「その人形が爆発して大幅に増殖した変種プシキがキップを回って脅かしているのに、我らに穴の中の鼠みたいに隠れて見ていろと言うのか!危険を冒してでも問題の解決をしようとしなければならないと決まっている!そんな労苦について、賄賂を受けたからと吐かすとは!」


副司令官は続いて、例の廃虚を見つけた後、誰も近づかないと心を集めたが、ジュスピアンとマキシミンが無闇にそこに接触したためこんなことになったし、これはネニャプル側の重大な協約破棄だと言い張った。ここにジュスピアンが居るわけでもないし、目撃者もないし、真意を判断できない非難に、あっちこっちで乱雑に意見が飛び出して来るなかで、副司令官が喋ったことがマキシミンの脳内で新たな情報の形になっていった。怪しい人形が爆発して。。。変種プシキが増殖?
イスピンはプシキたちは蜂蜜を探すハチみたいに、オートマトンの中の心臓の欠片に引かれると言った。血管が入れてる5丁の拳銃以外にも心臓の欠片が入ったオートマトンは数十個に達する。ヘレナが触れた音楽の箱みたいに、その中に入ってる王国の鉄が力を失うとプシキが押し寄せてくる。そして黒いチョコレートのような物質が生まれ、弾け出してくる。。。

「聞いてみるとその爆発したという人形について気になるところがありますが」

マキシミンは腰を伸ばしながら副司令官を見た。副司令官も彼を見た。同時にマリ・ダニエルからの切迫した声が耳の辺りで響いた。

「ちょっと、待って!あなたは主人公ではありません!哀れな人質らしく、おとなしくしてください!何も言わないようにしたんでしょう?」

いまは出来ない。ローランと同じく、マキシミンも返事しなくてもいいから楽だと思いながら副司令官を見た。

「そいつはもしかしてオートマトンだったのですか?」



291p

論理が貧弱になったオレンジ色の魔法使いの口からつい、言ってはいけない言葉が出てしまった。

「さっきから大公国の安危とか云々するけど、大公子の死は5年も経ったことだ。その時犯人が見つからなかったのはオルランヌ内部の事情に過ぎないし、大公国には他の後継者だって居るのに、いきなりその時の話をするのは他の意図があるかれではないか?今すぐレ厶に掛けられた汚名を払わないとキップでの同盟が瓦解される危機なのに、そんな古いことを言い訳に邪魔するとは、国が古いからか昔のことに拘って。。。」
「いま何と仰いました?」

ローランの声が一変すると相手はびくっとしたけど、自分の過ちはすぐ気付かなかった。それに構い無くローランの眉間にはナイフで引いたような線が生まれた。オルランヌで最も痛ましい、今までも深い傷で残ってる事件に対してよくも。。。

「大公国の後継を狙った重大な犯罪者の追跡が、ただ昔のことだと、本気で仰ったのですか?」
「いや、まあ、5年も経ったし。。。そんなことしたって死人が戻れるわけでもないだろう。我らにはもっと重大な問題があるというのにいつまで過ぎたことの話を。。。」

ローランは固い姿勢でそのものを正面から睨んだ。

「ご本人の意見に責任を果たす覚悟はあるんでしょう。名前と所属を明し、それが所属した団体の意見なのか、あなた個人の意見なのか明確にするように申します」
「な、何の。。。」
「大公国との戦争を求めているものはどちらなのか、はっきり明しなさいと言っているのです」

さっきから不安の目でローランを見ていたダビドは、額に手を付いて唇を噛んだ。どうしよう。早く止めなきゃと思ってはいたのに。彼は隣りのビビエンを振り向いた。

「戦争だなんて。。。どうしましょう、マダム・アルマンジュ。可能性は低いですが、もしかして向こうでもまじで戦争しようとしたら。。。」

ローランを見ているビビエンの表情も固まっていたけど、出てる言葉は案外平然としていた。

「帰って戦争の準備をするだけです」
「魔法使いたちと?それともレ厶と?」

ビビエンはダビドの方へ顔を向いた。そうすると初めて、いつだって冷淡で無表情だったビビエンの目が焦点を失い狂気を抱いたことを見たダビドは、驚いた目を大きく開いた。

「大公子に対する侮辱の前で、相手は誰であろうと構いません」

ダビドはびくっとして思い出した。そうだった。エトワールは近衛隊だった。
全てのテーブルの目がローランに集めていた。オレンジ色のローブを着た魔法使いは、別備軍の誰も自分のために出てくれないと手が震えた。自分の国を擁護するために乗り出したのに、状況が深刻になるとピスカー副司令官は足を抜いてしまった。つまり、一人で被れろということだ。ここでもっとでしゃばると自分勝手に両国の不和を促した人間になるだけだ。

「その。。。ような意味ではなかった。そしてわ、私はシムボリオンで重要な職域に努めているのではないため、オルランヌ大公国の公式的質問に対する答えは議長や事務国長がしたほうが良いと思う」



299p

「獣は人間の言葉を知らないように。。。」
レオメンティス教授の声だった。教授は自分の場所から抜け出してテーブルの中央に向かって歩き出した。片手で左耳を塞いだままだった。

「。。。魔法の世界を知らない者は、自分の目に見える世界が全てだと思います。カゲロウが今日初めて見た太陽は、万年前にも浮かんでいたというのに。王と高貴な者たちはおのれの領地が陶器の欠片で引いた線であることを知らず。。。」

レオメンティス教授が立ち止まると、魔法使いたちが立ち上がって場を退いた。教授は彼らを一人一人見回った。一人ずつ、選別するような視線が流れていきなりミルク色のガラスのような光彩が床の所々から飛び上がった。

「。。。そこに横たわり、永久に生きていく夢を見ます。遊びが終わって子供たちが家に帰ったら、線が消されたそのところには何が残っているんでしょうか」