イタリアのデザイナー(マリアノ・フォルチュニ) | 色彩認定講師カラリスト三本由美子(Fiore Rosso)のブログ

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「色」に興味のある方、「イタリア」に興味のある方,イタリア語を学んでいるカラリストの立場で、「色」と「イタリア」に関する事柄を綴っていきたいと思います。
お伝えした記事でいづれかの、あるいは両者への興味が増して頂ければ幸いに存じます。

マリアノ・フォルチュニ(Mariano Fortuny) その2

 

 デルフォス(前回に説明あり:Delphos)のデザインを発案したフォルチュニは、テキスタイルにおいても類まれな才能を発揮し、「布の魔術師」とも称されていた。

 

 天然染料による染め、型を用いたプリント、プリーツ加工といった、「魔術」のような彼の技術のアイデアは、入念に選ばれた生地に投じられた。

 

 ①     絹サテン(日本の絹織物-山形県鶴岡の軽目繻子or繻子羽二重))は、「デルフォス」に最適であった。

ごく薄い軽いサテン(繻子組織の織物又繻子組織)は、滑らかで光沢に富むが、糸が長く浮く分、摩擦に弱い。

 

 ②     絹ゴーズとオーヴァーガーメント

ゴーズは、薄い織物の事だが、絽や紗といった「からみ織」の布を指す。 (日本の「五本絽」と同様)

  絹ゴーズを用いて透き通る「オーヴァーガーメント(overgarment=上着を製 作)」

 

        

 オペラジャケット(絹ゴーズのオーヴァーガーメントの変形型か?)  三菱一号館マリアノ・フォルチュニ織りなすデザイン展2019/7  撮影  

 

 

 

 ③     絹ベルベット(15Cイタリアの服飾を特徴づける織物)とオーヴァーガーメント

 ベルベットを用いた「オーヴァーガーメント(上着)」は、生地のみではなく、デザインの面でも、イタリア・ルネサンスの服飾からの影響が大きかった。

だが、その違いは、模様の付け方にあった。

ベルベットの模様表現は、毛羽や輪名(わな=ループ)の有無、あるいは毛羽の高低差で模様を織りなす方法や、糸の色を変えて模様を絞り方法がある。

しかし、フォルチュニは、単色無地のベルベットにステンシル・プリントで模様を施した。それは、ルネサンスの時代になされていた織による模様表現よりも、はるかに手軽で、色数があり、パターンの折り返し等の自由度も高かった。

それでいて、染料や顔料をのせることで毛羽が抑えられ、織り出した模様のように見えるのだった。

つまり、シンプルなベルベットを用いてプリントすることで、重厚なイメージのあるベルベットに軽快さを与え、それでいてルネサンス期の芸術作品を想わせる、20Cのドレスをつくったのである。

        

    フード付きケープ(ベルベット布地)   

三菱一号館マリアノ・フォルチュニ織りなすデザイン展2019/7撮影

 

 フォルチュニは、発明した前回で紹介したデザイン「デルフォス」のみならず、「ベルベット」や「ゴーズ」の外衣まで工夫を凝らしていた。

シンプルなデザインであるが経糸,緯糸共にほぼ撚りが無いため美しい「デルフォス」、デルフォスに重ねる「ゴーズ」は、デルフォスのプリーツの凹凸と相まって、複雑な陰影ができ、しゃれた雰囲気に装える。一方、ベルベットには、色数もあり、あたかも織模様のようで、重厚に見えるが、実はステンシル・プリントであるゆえに軽量で着心地が良いのである。

 

彼の才能はファッション・デザイナー、テキスタイル・デザイナーにとどまらず、画家、舞台美術家、写真家、発明家,科学者であり、これら全ての分野にマルチの芸術家だったのであった。

 

 

参考文献:

・all about MARIANO FORTUNY  マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展          

毎日新聞社

 

・配色の教科書  城一夫 色彩文化研究会        パイ インターナショナル

・ファッションクロノロジー   NJ スティ―ヴァンソン       文化出版局