マリアノ・フォルチュニ (Mariano Fortuny) その1
デルフォス(delphos) と海緑色(英:sea-green)
フォルチュニは、1871年スペイン南部の都市グラナダで生まれた。1880年生来体が弱いことを憂慮した母親がヴェネチア(Venezia)への移住を決断したのでした。
20C初頭、フォルチュニはフランスのポール・ポワレと並んでコルセットを女性から解放し、直線的なシルエットをうみだしたのである。
彼の作品は、服飾デザインから始まるがそれは次のようなものでした。
必要最小限の装飾に抑え、シンプルな布地による美しさそのものをデザインに求め、古代ギリシア風ドレス「デルフォス(delphos)」(1896年、ギリシア・デルフォイ(Delpoi)の古代遺跡で発見された「デルフォイの御者」像に影響をうけた)を提案した。体になだらかに沿う絹地(日本や中東から輸入した絹地で染色)の細やかなプリーツが特徴。コルセットを使用せず、あるがままの女性の体を美しく見せたのです。
この古代ギリシャ風のプリーツドレスの色は、「海緑色(シーグリーン)」が代表的であるが、他に錆がかった秋の色等を使用しており、日本の色合いに影響を受け採用されたものです。
「デルフォイの御者」パブリックドメインより
ところで、「シーグリーン」とは海の色のうち、砂浜に近い底が浅い所の海の色としてよく見かけ、真っ青な海の色というより薄い黄緑よりの海系カラーです。別称は「海緑色」。JISの色彩企画では「強い黄緑」#32dbb3 の扱いになります。
彼の「デルフォス」の衣服の色彩は下記の通りです
「デルフォス」は若い女性の為のドレスであると考えがちですが、20代の若いスリムな女性が身につけても、腹部や背中に脂肪がついた中年女性が身につけても、シルバーグレーになり、背骨が曲がった女性が身につけても、いずれも豪華で華麗です。それは、フォルチュニが「デルフォス」でその衣装を美しく見せたかったという以上に、身につける女性本人をまずは居心地がよく、それでいて、美しく見せるという2つの課題をどちらも見事にクリアーしているからです。
それ故に、100年以上たっても、このファッションが時代遅れにはならず、時を超えて、芸術作品になっているのだと思います。
三菱一号館マリアノ・フォルチュニ織りなすデザイン展2019/7 撮影
フォルチュニは衣服のdesignのみならず、テキスタイルにも類稀な才能を発揮していました。詳細は、次回で。
参考文献:
・「All about MARIANO FORTUNY」 毎日新聞社
・wikipedia: : Mariano Fortuny