ローザ・ブリランテ (Rosa brillante)
私の一番好きな色は「ピンク色」です。特に鮮やかなピンク(rosa brillante)です。ここでは、その好みのピンク色を集めてみました。
ローザとは「バラの花」という意味ですが、同時に「ピンク色」を表す言葉です。語源が「バラの花」からきていて、トスカーナ州ウンブリア地方はバラの栽培地として有名です。何だかイタリアらしい命名だと私は思いました。
因みに、「ローザ(Rosa)」については2015年に「rosa」を使った諺を記載しています。
ところで、イタリアの国内で「ローザ」のワードで有名なのが「マリア・ローザ(maglia rosa)です。自転車ロードレース・ジロ・ディターリア(Giro d‘italia)において、個人総合成績1位の選手に与えられる薔薇色(ピンク)のジャージのことです。
各区間の所要時間を合わせ、合計の時間が最も少なかった選手がマリア・ローザを着用できるのです。最終区間の終点時点でマリア・ローザ着用の権利をもっている選手がジロの総合優勝者となるそうです。(1931年から施行)
これは、主催者であったスポーツ新聞「ガゼッタ・デロ・スポルト」の紙面の色に由来しています。 ![]()
また、最優秀若手選手賞にはマリア・ビアンカ(白いジャージ)があります。
因みにフランスでは同じ年、ツール・ド・フランスにおいて、マイヨ・ジョーヌ(黄色のジャージ)が着用されています。
ツール・ド・フランスに比べ勾配の厳しい坂を上る山岳ステージが多い為、イタリア人の間では「ツール・ド・フランスが世界最大のレースなら、ジロ・デ・イタリアは世界最高のレース」と評されています。
また、もう一つ思い浮かべる色名に「スキャパレリピンク(ショッキングピンク)」があります。スキャパレリというのは、エルザ・スキャパレリのことで、1930年代モード界を牽引したデザイナーです。20年代にシャネルのリトル・ブラックドレスに対抗して蛍光色のピンク使いのドレスを発表しました。詳細は2016年7月のブログで、記載しています。
彼女はこの色を「明るい色、ありえない色、大胆な色、映える色、生命力あふれる色であり、世界中の光と鳥と魚を一緒にしたような色、中国とペルーの色であり、決して西洋のものではない、混ぜても薄めてもいないショッキングな色」と称しています。
(PARIS オートクチュール展より 三菱一号館美術館にて)
この衣装は、コレクション「占星術」の3型のラファエル作「パリスの審判」の3女神を表現した内の一つです。金糸とシークインでメデユーサの頭の形に刺繍したショッキングピンクのケープです。
注:場所や照明等の理由で、実物の色とは多少異なりますが、ご容赦の程をお願い致します。
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一方、フランスでは「(英)ポンパドゥール・ピンク」と言う色名があります。
フランス国王ルイ15世の愛妾であったポンパドゥール侯爵夫人に由来する色名です。華麗なロココ文化の保護者であったのみだけではなく、セーヴル王立製陶所を支援しました。1757年、化学者エロ―が美しいピンク色の釉薬を作り上げ、その色を夫人に因んで、「ポンパドゥール・ピンク」と命名したということです。エロ―が急死した為、当時の製法は謎に包まれたままです。
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また、最近の私のお気に入りのローザに下記のストールがあります。
色目は、「スキャパレリピンク」と「ポンパドゥール・ピンク」の中間です。
ピンク色なのに、実はこれは「ベニバナ染め」なのです。「紅花染め」は鮮やかな赤だと思っていましたが、それは、何度も染色を繰り返した結果だそうです。
また、媒染によって色目も変わってくるのだそうです。これは、紅花染めの繰り返しの行程の幾度目かの作品なのでしょう?!
これは、 「染司 吉岡更紗さん」の作品ですが、わたしはこの色に一目ぼれしてしまいました。まさに一期一会でした。煌めく陽ざしにも負けないくらい映える色であり、その絹の織りで涼も感じられるが、秋冬では華やかさを演出できる色だと確信しています。
参考文献
●366日のヨーロッパの伝統色図鑑 橋本実千代他 パイインターナショナル
●フランスの伝統色 城一夫 パイインターナショナル
●イタリアの伝統色 長谷川博士 城一夫 パイインターナショナル
●色で巡る日本と世界 色彩文化研究会 城一夫監修 青幻舎


