【芦ノ湖畔の誘惑】
真夏の芦ノ湖の早朝
靄が幻想的に湖面を
覆っていました
真之の
朝露に濡れた足は
湖畔に向っていました
遊覧船の無人桟橋に立てた
easel の canvas に向って
描いていた
真之の方に向って
脚を忍ばせる様に
近づいて来る人影が
湖面に映っていました
裾広がりの
ワンピースを着た
大人の人影だと
真之は感じました
山中湖のテニス部合宿で
先輩女子部員の洗礼を
受けて来たばかりの
真之は
筆の動きを止め
迫って来つつある
女性の影を
息をひそめて
追っていました
女性は
真之の背後まで来ると
ピタリと脚を止めました
『澤田くん
おはよう~ 』
白の pumps-heel を履いた
《 緑川 恭子 》の
透き通った明るい声が
湖面にこだまして
真之を油断させました
『なんだ!
恭子さんだったのですか・・』
真之は
少しがっかりした様に
恭子 に話し掛けました
『あらっ⁉️ ・・
澤田くん・・
一体誰だったら
いいの⁉️』
『いえっ・・あの~
近づいて来る人影が
映っていたので
誰なのかなあ~
と思って
ただ ・・
ドキドキしただけです‼️』
嘘をつけない真之は
本気で応じていました
『わたしを
どこで
見ていたの⁉️』
真之は
恭子 のからかいに
真面目に答えました
『ほらっ!
そこの湖面に
恭子さんの
美しい姿が・・』
真之は
冗談っぽく
つけ加えて言いました
恭子 が・・
『ほんとうね❗️
美しいわたしが
たしかに映ってわね‼️』
恭子 は
少年臭さの残る
真之の心の扉を
簡単に開いたのでした


