5-2 日本国大使館 3 | 夢、成る瞬間

夢、成る瞬間

ダグラス・コマエ物語

 再び待たされる。十分経ったところでようやく役人風の中年男が奥から出てきた。

 神経質な感じの人だった。疲れているのか目の下にくまを作っていた。

 役人の話によると、日本人に対して避難勧告が出ているようだった。

 と言って、国際便は飛んでいなかった。一体どうやって避難すればいいのか。自衛隊機でも来てくれるのですかと問い返すと、役人はなんとも役人流にのらりくらりと色んなことを並べ立てるだけで、なにも具体的なことは提示されなかった。

 はっきりしない口調にしまいにいらいらしてきた。なにより気に入らなかったのは役人の態度だった。
 大使館の人間で確かに優秀で偉いのかもしれなかった。だが、役人は明らかに上からものを言っており、ぼくと
アダチ、そしてこの役人との間には微妙な上下関係のような空気が存在していた。

(なんだよ偉そうに――)
 ぼくは反発を感じ、結局なにも分からないままに大使館をあとにした。
「ここに答えはなかったな」
 
アダチと顔を見合わせ、ぼくは言った。やれやれとアダチは首を振った。

 

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