船内は驚くほど人であふれていた。
あたりにむっとした空気が充満し、漂う強烈な悪臭に息が詰まりそうだった。そこらじゅうに荷物が積み上げられ、人はその荷物群に囲まれて座った。
お世辞にも衛生的であるとは言えなかった。
「その昔、マライタは<ラモスの島>と呼ばれていました」
と教えてくれたのは、牧師だった。ソロモンを発見したスペイン人たちによってつけられた名前だという。
同一の語源を有するのか、それともまったく関連性がないのか分からないが、かつてマライタにおいて戦士は、
「ラモ」
と呼ばれていた。
ラモとは超人的な力を持ち、なにものをも恐れず、どんな困難にも立ち向かう勇敢な男を指す。
出航を待つラモス号(ソロモン諸島ホニアラ 1994年)