●日中戦争見聞記~1939年のアジア @コリン・ロス 訳/金森誠也・安藤勉 | ★50歳からの勉強道~読書録★

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本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

日中戦争見聞記、というけれど、
最後の蒋介石政府の重慶訪問を除いて
全くドンパチの様子は見られない。


著者のロスさんはドイツ人の特権を利用して
日本各地と朝鮮、北京、満州、モンゴル
上海、香港や、ミャンマー国境の雲南まで、
わりとのどかに大旅行し、要人と会談、
率直かつ的確なレポートをしているみたい。


もともと日中戦争という言い方は正しくない
むしろこれは、中国における中国をめぐる
戦争である。
日本人は全く宣伝が下手であり、
たとえ彼らに言い分があっても、
全世界は信じようとしない。
私の見解によれば、自分達は中国の民衆を
相手に戦っているのではない、という
日本人の主張は正しい。

1937年の盧溝橋事件以後、望まぬ戦いが
2年続き、1939年第二次世界勃発。
引き続き終戦まで泥沼の様相に。




「満州国」、「大東亜共栄圏」、という言葉は
道を誤った日本・・・の象徴に思われ
抵抗があった。良くない言葉と思っていた。
けど、、これも自虐史観なのかなぁ。


ロスさんは東京~下関を車で旅するんだが
メルセデスにハーケンクロイツの小旗を見た
農村の人達に「ドイツだ!ドイツ人だ!」と
ヒトラー式の挨拶で、歓迎されまくる。

瓦礫の残る横浜




アメリカではしきりに、日本人を
残忍非道な戦士である、と宣伝するが、
この厳しい戦時下に花見を楽しむため
中隊ごとに引率されて公園を散歩している
姿は、西欧的観念では理解できない。

日本人は相変わらず無邪気でほがらかで
愛嬌がある。そして上品だ。
地球上で日本人に匹敵できるほど、
親切で礼儀正しい国民はないであろう。

靖国神社の大祭を丸一日、最後まで見学。




朝鮮に渡ったロスさんは、15年前には
「薄汚い巨大な村」だったソウルが、
広い街路を縦横に巡らす近代的大都市であり
日本人と朝鮮人の結婚式にも遭遇し、驚く。


15年前、このホテルにはヨーロッパ人
ばかりいたのに、今ではほとんどおらず
居心地の悪い思いがした。
今日では日本の要素、正しくは東亜の要素が
支配的である。なぜならホールでも食堂でも
日本人の間に一群の男女の朝鮮人が
入り交じっているからである。

旧王宮に対し威圧感を与える朝鮮総督府




同じく15年前に訪れていた満州は、当時
満鉄が炭鉱の露天掘りを始めたばかり。
ロスさんは、石炭生産を向上させる!
石炭から石油を取り出す!と日本人が語る
夢のような将来計画を笑いながら聞いた。


新しい都市が再建され
あちこちに製油施設の煙突が聳え立っていた。すべては現実となった!
首都の新京は誠に壮大な仕組みで建設され
気味の悪いほど迅速に人が集まった。
道路の幅は広く、まっすぐにどこまでも続く
不気味なほどのコンクリート舗装道路だった。

「満州国」 国立銀行




満州国の総務長官・星野直樹は、ロスさんに
西洋の技術や科学の受け入れに
中国語は日本語より向かないことを語り、


「アジアにとって不可欠の東洋思想と、
西洋思想の融合の為に、
欧米と歩調を合わせてゆこうというのなら、
日本の方が中国より優れた、
模範的かつ強力な文化を持っています。」


「満州国」   官庁
満州国政府では、日本のやかましい礼儀作法
が無く、官僚相手の会談でも「ハロー、ビル」
といったアメリカ式の挨拶だった。




北京を支配していたヨーロッパ人は
税金を払わず、生活費は無料同然、
中国人を使役して洋式生活の便益を整え、
神々のように暮らしていたという。


しかしロスさんは、今回鉄道で旅をして、
路線が延長され、連結道路やバス路線ができ
橋はコンクリートに換えられており、
新しい村や都市が発生して、至る所で
日本人技師が耕作指導する様子に驚いている。

北部満州。近代的機械で刈り入れ作業




今、日本人は大がかりな手段を用いて
中国人の共感を得ようとしている。
西欧人は破壊された激戦地の写真を知って
いるが、広大な中国のかなりの部分が
何ら戦争の影響を受けていないことを
忘れている。
ここ華北で、破壊の跡は一切見られず、
ほとんど至る所の平原が耕されている。


とにかく戦争が続いている間、いや
そればかりか、終結の見通しがつかない今、
すでに東亜新秩序が始まっているという
事実がある。

ハルピンはかつて大ロシア帝国の極東首都。
中国人が主権を取り戻すと悪業の報復を
受けたが、日本人支配で改善される。
白系露人委員会は日本人に協力しており、
ドイツ人の著者には異様に見えた。




東亜新秩序は、「日中韓」三国の共同で
共産主義を打倒し、密接な経済協力の下に
新しい文明を築き上げるもの。だという。

白人支配から脱却し、日本の指導による
大東亜連合を創設する。
これが満州国建国を核とする大東亜共栄圏。


この時点までは成功していたんじゃない?
しかも実現したらアジアの解放だ。
素晴らしいことなんじゃないの??


単なる方便なのか、崇高な使命感なのか、、
自虐史観を捨て、先入観を捨て、
もっともっと事実を知りたい!と思ったよ。

日本の援助で蒙古連合自治政府の首席と
なった徳王は、チンギス・ハンの子孫。

コリン・ロスさんはウィーン生れの
オーストリア新聞特派員。
1938年独墺合邦で「ドイツ人」となる。





とはいえ、自虐じゃないと落ち着かない
日本人向けに、ちゃんと欠点も聞きましょう


↘日本人の欠点は何事も決定できず、
   常に全てを、しかも同時に望んでいる。
   そのため、日中戦争を終わらせることに
   失敗してきた。

↘日本人は当座の間に合わせに終始する
     民族である。

↘怒りを示さず自制した態度をとる、という
    美点は、同時に仮面をつけた偽善者であり
    ヨーロッパ人は日本人を不誠実だと
    考えるようになる。

↘日本人に相対した者は誰でも、
    決断力に乏しく何事もためらいがちで、
    形式にこだわる官僚的態度に驚き、
    しまいに絶望する。



ハイ反省。ちょっと満足?