●宮沢賢治詩集 @中村稔/編 | ★50歳からの勉強道~読書録★

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本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

最後はやっぱり詩集を読もう。


宮沢賢治が生前出した唯一の詩集が
「春と修羅」で、その後「春と修羅二集、三集」
を予定して、果たせずに終わった為
現在では生前公刊されたものを
「春と修羅・第一集」と呼んでいる。





この本は昭和37年初版の古いもので
春と修羅1~4と、他未整理のもの、文語詩
など、賢治の詩が盛り沢山だけど、、


有名な「雨ニモ負ケズ」は、賢治の死後
手帳に書き付けてあるのが発見されたので、
本人が詩として発表しようとしたかどうか
解らないんだそうだ。

「春と修羅」       おれは一人の修羅なのだ





残念ながら普段、詩など鑑賞する文学性は
全く持ち合わせておらず、
特に春と修羅・第一集の賢治ワールドは
よくワカラナイ。。


けど、最愛の妹トシの死を嘆く
「永訣の朝」、「松の針」、「無声慟哭」
などは、ありのままの肉声が綴られて
悲しさもストレートに伝わるよ。


教師時代の妹トシさん。




春と修羅・第三集は、賢治が教師を辞めて
羅須地人協会を立ち上げ、
伝説的とも言える農民への献身に
没頭した時期の作品、
二集はその間の過渡期の作品、
四集は製作時期不明のもの、となる。



特に三集、四集は
農業技師として、指導者として、
具体的に思ったこと、あったことをそのまま
書いたようなものが多くて、
農業への情熱、成果が出ない苦労、など、
リアル宮沢賢治を感じることができる。


三集の「稲作挿話」では
賢治が、農学校を卒業した生徒に
農業指導する実際の会話を詩にしていて、
教え子の田んぼを気にかけながら、
自分ではどうにもできないもどかしさ、、

「英雄たちの選択」より




あすこの田はねえ、
あの種類では窒素があんまり多過ぎるから
もうきっぱりと灌水を切ってね
三番除草はしないんだ

・・・・・

それからいいかい
今月末にあの稲が
君の胸より伸びたらねえ
ちょうどシャツの上のぼたんを
定規にしてねえ
葉先を刈ってしまうんだ
        ・・・汗だけでない
             泪も拭いているんだな・・・・・

・・・・・・

しっかりやるんだよ
これからの本統の勉強はねえ
テニスをしながら商売の先生から
義理で教わることでないんだ
・・・





こういう分かりやすい言葉で
書かれてると、私でもワカルのだ。(^-^)
宇宙に関する科学的な視点は
科学者の先生の著書ゆらぎの不思議と
同じこと言ってる



正しく強く生きるということは
みんなが銀河全体を
めいめいとして感ずることだ


雲が風と水と虚空と光と核の塵とで
なりたつときに
風も地殻もまたわたくしも
それとひとしく組成され
じつにわたくしは
水や風やそれらの核の一部分で
それをわたくしが感ずることは
水や光や風ぜんたいがわたくしなのだ。
・・・蜂はどいつもみんな小さなオルガンだ・・・


自作の教科書




科学の力で農村を変えようと、
土壌学、肥料学の知識を惜しみ無く提供し
詩を詠み、演劇を書き、レコードをかけ、
農民文化、農民芸術を興して
豊かな花巻を目指す。


若者たちには明るい希望があり
銀河も宇宙も花や鳥、山川も人間も同じ・・
という理想郷岩手、イーハトーブを
作りたかった、作れると思って
不器用に走り回った、宮沢賢治。


自分は実家が裕福な質屋で、
何不自由無い暮らしができる・・からこそ
貧しく暗い農村の若者を
見過ごすことができなかったのかな。。


肥料にするための石灰岩を砕く現場に佇む
賢治。(右端)
詩人である以上に
真摯な農業技師である姿が胸を打つ。