●天翔る白日~小説大津皇子 @黒岩重吾 | ★50歳からの勉強道~読書録★

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本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

大津皇子は天武天皇の息子。
後継者としての人望が最も大きかった為に
天武の妻である持統天皇に睨まれ、
排除されてしまう、悲劇の皇子。


すると三年後、ライバルであった持統の息子
草壁皇子が死んでしまい、祟りを恐れて
二上山に手厚く葬られる。。
その後の物語が折口信夫(釈迢空)の
「死者の書」になる。






この本、ヤケに分厚いなぁ。。と思ったら
天武天皇の政治改革について、
すンごく詳しく書いてある。


合議制でもなく、摂政制でもなく、
強力な「天皇親政」の権力を以て、
社会のシステムをまるっと変える!
豪族たちの氏族を改め、新しい姓を与え
武器をを奪った上で、律令制度の施行の為
全氏族を官人体制に組み込む。

在位673~686(朱鳥元年)




新しい位階制度は八色の姓、
服装や髪型は唐風に改め、正史を編纂し、
天皇家の権威を不動のものにする。


これまでの百済路線を改め、朝鮮半島を
統一した新羅に追い付け追い越せ!
親新羅かつ、唐に倣う国際的な政治は
ほとんど明治維新か?て位の大変革。



ちなみに、飛鳥宮は686年(朱鳥元年)から
飛鳥浄御原宮と呼ばれるようになる。

推古朝の時代から道教思想の影響で
紫が最高の色とされてきたけど、
敵対する儒教では「紫は朱を奪う憎むべき色」
天武朝では、朱色を最高位としたんだ。


飛鳥浄御原宮の復元遺構





そして「女性」が政治に及ぼす影響の凄まじさ!

母親が貴種か?   妻の実家が有力か?
娘をどこに嫁にやるか?  
これで政治が動いちゃう。てかほぼコレ。




大津の場合、母の大田皇女は持統の実の姉で
天武天皇に一番愛された女性。
早逝しなければ当然、皇后だったし
人望のある大津は、皇太子のはずだった。


美貌の姉、大田に対する持統の嫉妬心・・・
自分の息子より、遥かに優れた姉の息子。
醜い女のライバル心が、大津を追い詰める。
怖いですねー





そして大津の妻、山辺皇女は天智の娘だけど
母・常陸娘の父は、蘇我赤兄。
孝徳天皇の嫡子・有馬皇子を讒言して
死に追いやった、、という悪評の人物で、
天智天皇に天武の生命を断つよう進言した・・


という事から、持統は赤兄を深く恨み、
壬申の乱後は、死刑を強く主張したという。
その孫娘が大津の嫁。そりゃ冷たくするわ。



さらに、文武両道モテ男の大津は、
持統の大事な病弱ヒヨヒヨひとり息子、
草壁から、女を寝取る!(石川郎女)
もー完全にアウトです。






◆大津皇子、石川郎女に贈る御歌一首

      あしひきの山のしづくに妹待つと
               われ立ち濡れぬ山のしづくに

◆石川郎女、和(こた)へ奉る歌一首

        吾を待つと君が濡れけむあしひきの
                 山のしづくに成らましものを


◆大津皇子、密かに石川郎女に婚ふ時、
   津守連通その事を占へ露はすに、
   皇子の作りましし御歌一首

         大船の津守の占に告らむとは
               まさしに知りてわが二人宿(ね)し


・・これは監視役の津守が、持統と草壁に
報告するのを承知で密会した、という、
なんと大胆で、男らしくて、胸キュンで。。
もう破滅しか道はなかったんだね。(;_;)



「たのしい万葉集」の大津皇子