●皇室をお護りせよ!~鎌田中将への密命 @鎌田勇 | ★50歳からの勉強道~読書録★

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本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

児島襄「日本占領」でのっけから驚いたのが、
日本に「軍政」がしかれるのを直前で阻止した
鎌田詮一中将の話し。ナニー?



結局GHQは、最初から「間接統治」を採用し、
日本政府を「背後から指導」するんだけど、
もし「軍政」となると、
天皇や日本政府は無きものとなり、
米軍が直接日本国民を支配することになる。



これを一人でマッカーサーに直訴しに行き、
粘りに粘って撤回を取付けると、
「通貨は米軍が発行、公用語は英語」などと
書かれた『日本国民に告ぐ』布告の紙を
手に血が滲むほどに破り、帰ってきた・・と。



驚いて調べると、2015年にBS朝日で
「皇室を守った父子の物語」の放送があった!
で、もっと詳しく知りたい、という反響から
詮一さんの息子勇さんがこの本を出版した。
まぁ、驚くこといっばいだよ。






まず驚くのが、鎌田詮一中将の経歴!
造船技術官だった伯父の影響から、
「資源の乏しい日本には技術こそが重要だ」と
出世コースではない工兵科に進み、
京都帝国大学でコンクリートを研究。


アメリカのイリノイ大学、マサチューセッツ
工科大学(MIT)で学ぶと、米陸軍に入隊し、
工兵第一連隊でなんと大隊長を務める。
そんな人いるの?変り種~。。。でもスゴい!


イリノイ大学では当初入学拒否されたので、
ツテを頼り論文を提出して直訴。
高く評価され、客員研究員として迎えられた。





詮一さんは、とても優秀だったんだけど、
それ以上に明るいナイスキャラで愛される。
丁度満州事変の時期で、日本人の評判が悪く
なっても、アメリカ人たちは皆、
カマダ大隊長を信頼し、慕ってくれたんだ。



すんごい逸話があって、国際連盟脱退後、
今後の日本に対する米国の方針を、密かに
探ってくれ!  と駐米武官から頼まれた時、
スパイのような指令に悩んだ詮一さんは、、
、、、、、直接聞いてみた!!!!!


この「はじめてのおスパイ」みたいな突撃は
センイチらしい、と好意的に話が進み、
なんと直接マッカーサーが会ってくれた!
・・という武勇伝のような、笑い話のような。


第一次先遣隊輸送機は日本兵の攻撃を恐れ、
滑走路の逆側に無理な着陸をした。






そして実は、この「マッカーサー面接」が
後の「平和占領」への大きな伏線となる。


進駐の時、マッカーサーは日本側受入の
接伴委員長にセンイチ・カマダを指名し、
一番最初に日本に降りる、先遣隊の隊長には
カマダ大隊長の親しい部下を配したのだ。



厚木飛行場で思わぬ再会をした二人は狂喜し
ジョークを交わし談笑、殺伐とした現場は
一気に和んで、日米協力してマッカーサーを
迎える準備を整えることになる。
知らなかったよね~、こんな話し。


先遣隊と厚木飛行場のテントで協議。
テンチ大佐、有末精三、立ってる鎌田中将。





開拓により国を作ってきたアメリカでは
日本と違って「工兵」の地位がとても高く、
優秀な学生はみな工兵科を志願するという。
つまりエンジニア。理科系の頭脳。


そんな米軍の工兵で大隊長を務めた日本人に
米軍将校は一目おき、だからこそ、冒頭の
「布告撤回の直訴」なんかも可能になった。
そしてマッカーサーも工兵出身。これ大事!

アメリカ陸軍工兵隊の金城の記章。
日本は最初に歩兵が上陸して壊滅しちゃう。。
米国は先に工兵隊が道を作り、歩兵は最後。





その後、詮一さんは米軍トップである
アイケルバーガー中将と仲良くし、
米兵たちを個人的にもてなして、少しでも
日本の心証を良くする「国民外交」を実践する。


本牧の自宅で米軍将校をオモテナシする
中央鎌田夫妻、後ろ、まだ十代の勇さんは
ピアノを弾き、米兵を喜ばせた。






可笑しかったのは、日本のインフラ整備の為
工兵長官(チーフ・オブ・エンジニア)を呼べ、
と言われ、日本にそんな地位はない、と
担当者が70人も集まってきた。


米工兵部長のケーシー少将は、唖然とし、
さらに行政の担当が細かく分かれすぎ
責任の所在がハッキリしないことに呆れ、
「日本が敗戦した原因がこれで読めた」と。。


結局、仕事が捗らないので、とりあえず
「何でもカマダに頼め!」ということになる。


現在も全く変わってないとこみると、
占領軍にも粉砕できなかった「伝統芸」は
皇室並みに日本に根付いているようで。。


外国人との交流には音楽的素養も大切、と
息子に教育。勇さんは、のち作曲家になる。





マッカーサーと鎌田中将、テンチ大佐ら
「工兵の絆」が、世界に類の無い平和占領を
可能にしていたんだなぁ。
国の平和が、人と人との絆で保たれた。
人知れず。 尊い。