●天平の甍 @井上靖 | ★50歳からの勉強道~読書録★

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本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

聖武天皇の天平4年。732年。



第9次遣唐使の学生僧、普照が
20年の歳月を経て鑑真和上を伴い
帰国するまでのお話。



全編舞台は中国。

よくもこんなに詳しく、、
と感心するほど渡航の苦労や、
異国で過ごす学生僧の様子が描かれている。


淡海三船の「唐大和上東征記」など
詳細な資料に基づいているという。




それにしても、鑑真が日本に来るのに
5回も失敗し、のべ10年もかかって来てくれた、ということ知って感動!



鑑真のような高僧が危険を冒してまで
異国へ流出してしまうことは、
中国側としては許し難いことだったのだ。



最初は743年、鑑真55才から始まり、
密告され頓挫→遭難で中止→
日本僧の投獄→また密告で送還、、
を繰り返し5年経過。



5回目の出航は暴風雨で海南島へ漂着。

鑑真は失明し、失意のうちに引き返す。



それでも鑑真の「日本へゆく」という
決心は揺らがない。
なんと有り難いことか。




さらに5年後。

第10回遣唐使船の帰国便に
「こっそり」乗船。

しかしまたもや嵐で沖縄に漂着後、
ついに薩摩へ上陸成功した。




奈良に迎えられてからは戒壇院を設け、
戒律を授ける導師となり、
晩年の10年間を日本に捧げてくれた。



今まで日本になかった、正式に僧を
認定するシステムができたのだ。





この「天平の甍」という名作のお陰で、
中国においても鑑真の功績が広く知られる
ようになり、記念碑なども建ったそうだ。




普照を中心に、栄叡、戒融、玄朗、業行。

5人の無名な修行僧の壮絶な生き様は
人生の縮図だなあ。

胸に迫り、ドキドキしながら読む。



なにもかにも!とにもかくにも!
いにしえの人達に感謝せずにはいられなくなる、強烈な一冊であった。






唐招提寺の鑑真和上坐像は
日本最古の肖像彫刻