❖三月三日は『上巳の節句(供)』ということで、普段は朔日にお詣りする天台宗系の単立寺院へ伺いました。


この寺院の開山は、比叡山延暦寺で戦後初の千日回峰行を満行した『叡南祖賢師』のお弟子さんで、伝教大師最澄の御廟である浄土院の十二年籠山行を満行した『中野英賢師』。




御本尊に[薬師瑠璃光如来]を祀ります。


普段はあまり気に留めてなかったのですが、本堂に入りますと柱に天台宗の高僧の筆蹟カレンダーが掛かっており、三月が[脚下照顧]、筆は『北嶺大行満大阿闍梨光永圓道大阿闍梨』でした。大阿闍梨は五十人目の千日回峰行満行者で、叡南祖賢師からすると曾孫弟子にあたる方です。



 

大意

今まで歩んできた道はこれでよかっ たのだろうか、自身の考えは間違って いなかったのだろうかと、人生におい ての原点回帰をし、反省してみよう。 回峰行は歩行禅であるとおっしゃる。


阿闍梨様が、真理や仏法が遠いところ にある特別なものであると思い込み、 自ら手の届くところにある大切なもの を見過ごしているのではないかと問い かけておられるのかもしれない。


大行満 大阿闍梨 (大津)大乗院住職

光永圓道


(薬王山正法寺 岐阜県)


巷、天台宗の問題が話題となり、また、昨日のブログ『阿闍梨さんの遺言』で『得度』を投稿したこともありなんとなく御本尊がいつも以上に気になりました。総本山延暦寺根本中堂の御本尊は秘仏。直に尊顔を拝することはありませんが、こちらは常時開帳されています。




薬師瑠璃光如来の本願は、説明文を拝見しますと、


薬師如来は東方浄瑠璃世界の仏様として信仰され あたかも太陽が此の世を照らし大自然に恵み与えてくださりますように現世の衆生な苦しみや悩みを共済してくださる仏様です。 


とくに薬師の大顔は病める衆生・苦しむ衆生・悩む衆生・飢える衆生・渇く衆生等心身の病いをことごとくとり除き、衆生の願いを満足させると誓願されるものであります。


薬師如来はこのように、人間本来の生きるという生活実践の信仰でありますから現実社会にあてはめて信仰されている仏様なのです。

とありました。


また、比叡山延暦寺について、今一度書籍を読み返しますと、



一歩お山に足を 踏み入れると、静寂、荘厳な大自然に抱かれ点 在する大小の諸堂塔…。その圧倒的なお山(霊場)の雰囲気から比叡山千二百年の時空を超えた息づかいが感じられる。


比叡山延暦寺総本堂の根本中堂は、天台宗の開祖伝教大師最澄が「鎮護国家の根本道場」とし て延暦七(七八八)年、根本中堂の前身「一乘 止観院」を創建したのが始まりである。現在の根本中堂は、元亀二(一五七一)年の織田信長 の焼き打ちのあと、徳川幕府三代将軍徳川家光公の命によって寛永十一(一六三四)年に再建された。昭和二十八(一九五三)年には国宝の指定を受けている。


堂内は外陣、中陣、内陣に分かれている。大師 ご自身が刻んだといわれる本尊薬師如来像(秘 仏)は内陣の厨子に安置される。この内陣は参詣者が手を合わせる中陣と同じ目線、高さにあり、天台造りとも呼ばれ天台教義の象徴にもなる。堂内又は本尊の前には開創以来の「不滅の法灯」が千二百年間、絶えることなく輝き続けている。


法灯は伝教大師最澄の「あきらけくのちの仏のみ世までも光り伝えよ法のともしび」 と詠われ、そのともしびは、今もお山に脈々と 引き継がれているのである。


存在するものにはすべて、草木一本に至るまで仏性があるという仏教の教え。このお山の大自然、諸堂は修行する人、お参りに訪れる人たちすべてを包み込む。


比叡山開創千二百(昭和六十二)年には、天台の精神のもとに現在も続く初の世界宗教サミッ トが開催され、また一九九四(平成六)年十二 月には、ユネスコの世界遺産条約により世界文化遺産として登録された。


伝教大師最澄による霊峰比叡の光は、人類が生 み出した偉大な文化として世界に向けて新たに 光り輝き始めている。

の一文があります。


昨日のブログで『得度』を書いたとしましたが、私は天台宗の得度のことは詳しく存じません。酒井雄哉大阿闍梨の法縁から在家で得度した著者の玄秀盛氏がどのようにされたかは文中では分かりませんが、中にあった『十善戒』の文字が非常に印象に残りました。


天台宗においては【十重禁戒】を重用するとのことですが、次のような内容でしたのでご紹介させて頂きます。


【十重禁戒】


殺戒 - 生き物を殺さない

盗戒 - 盗みを働かない

婬戒 - 出家者は性交渉をもたず、在家は不倫をしない

妄語戒 - 嘘を言わない

酤酒戒 - 酒を売らない

説四衆過戒 - 菩薩、比丘、比丘尼の犯した罪を吹聴しない

自讚毀他戒 - 自分を誉めて他人をそしりけなさない

慳惜加毀戒 - 人に与えることについて惜しまない

瞋心不受悔戒 - 他人から謝罪を受けたらそれを受け入れ、怒りの心によって許さないということをしない

謗三宝戒 - 仏・法・僧の三宝をそしらない


本日は、天台宗宗務庁において聴聞が開かれ、記者会見も行われると見聞しておりますが、日頃、比叡山を拠り所の一つと信仰の礎にしている者として動向に注視したいと思います。


薬師瑠璃光如来に手を合わせながら、ふと思い浮かべた参拝でした。


南無薬師瑠璃光如来🙏



(延暦寺根本中堂内陣 延暦寺公式サイト)