エビデンスを考える | Aussie Physio (オーストラリアの理学療法)

Aussie Physio (オーストラリアの理学療法)

日本で理学療法士として働いた後

オーストラリアでPhysiotherapist (理学療法士)になるために渡豪

そんな日々の中での気づき

今日は大学で学んだことについてまとめる意味を含めて少し紹介してみたいと思います。

理学療法士の方々や医療に携わる方々はおそらく聞いたことがあると思いますが、 Evidence Based Medicine/Evidence Based Physiotherapy/Evidence Based Practice (EBM/EBP) という言葉が僕らの業界では非常に重要とされています。

なにをもってEBPというのか、みなさん色々な意見があると思いますが、簡単に言うと最新の情報(研究)をもとに最も効果的な治療やマネジメントを行い患者さんの必要とするアウトカムを得ることが基本概念にあると思います。

これは自分の中で出来るだけ心がけようと思っていても、実際の日々の臨床を行っていく上で浮かび上がってくる疑問に対して、実際にどういう風にEBPを適応すればいいのか自分のなかで落とし込めてない部分がありました(というかまだ沢山ありますが・・・)。

また、自分の中で研究よりはやはり臨床が楽しいと言い聞かせている部分もありました。きっとそれは研究を実際に行ったことがなく、研究の本質を理解していないことからくる苦手意識の裏返しなのだと思います。今でも研究の本質を理解できているわけではないですが、それでも少しずつそういった苦手意識に向き合う必要があると肌で感じています。そういった意味でも大学院で研究についても学べることは本当にいい機会になると思います。


それはさておき、実際に自分が分からないこと(例えばこの患者さんどうしてよくならないのだろう?もっと効果的な治療はあるのかな?)といった疑問に対して、どういう風に今まで取り組んできたかというと、文献をただ漠然と検索して、なるべく新しいものを選んでそれに関連することを読み、自分の臨床との関連性を見つけ、そしてそれを実際に自分の臨床に自分なりに取り入れて行う、そういった過程を踏んでいました。

まずこの時点で、では実際にどういった文献を探せばいいのか、まずはそこから修正が必要だったことに気付きました。今まで自分が文献検索を行う場合、例えば頸部痛を有した患者さんに対する理学療法を調べたい場合、「頸部痛、理学療法、徒手療法(マニュアルセラピー)」などと大まかに検索キーワードを決めて検索していました。


ここで僕が本来行うべき行動としては、実際に検索キーワード決める段階として『より細かい質問を自分にする必要があった』ということです。この手助けとなるのがPopulation, Intervention, Comparison, Outcome(PICO:ピコ)を使った考え方です。

どういうことかというと、例えば頸部痛を有する患者さんであったとしても、まずPopulation(もしくはPatient)が ‘頸部痛を有する患者’だと範囲が広すぎます。自分が担当している患者さんが、 術後によるものなのか、関節リウマチ性の頚椎疾患か、交通事故・外傷後か、女性/男性か、子供・高齢者か、などなどの要因によって、調べている文献が大きく変わってきます。(実際の例としてここでは一応オフィスワークを主に行っている若年~中年女性としておきます)。

次にIntervention ですが、要は自分が最も興味のある、検討したい治療法/マネジメントが何かを考えます。例えば自分がもっと治療効果の検討を行いたいと思っていることが頸部深部筋(Deep Neck Flexors : DNF)のトレーニングだったとします(これはDNFのトレーニングだけに限らず、例えば姿勢のアドバイスを行う、エルゴのミックスのチェックを行うなどでも構いません。自分がどこの部分に興味があるかで変わってきます。)

そして次に考慮しなければいけないのがComparison (比較)のグループです。先ほど述べたDNFのトレーニングは行わず、一般的なマニュアルセラピー(頚椎モビライゼーション、頸部筋群マッサージ、ストレッチ指導)だけを行うとします。

(もし本当にDNFトレーニングの効果のみを検討したい場合、本来であればDNFトレーニング群と、何も治療を行わない群に分ける必要がありますが、ethics (倫理的)の問題で、一つの群が全く治療を受けないということは認められにくいと思います。なので、ここでは最初のグループはマニュアルセラピー+DNFトレーニングを行う群、二グループ目がマニュアルセラピーのみの群、に分けることでDNFトレーニングの治療効果を通常の治療に加えることの効果を検証することができるとします。)

そして最後がOutcome です。多くの場合、患者さんの主訴は痛みですからこれらのプログラムを行うことによって、例えば痛みがVASでどの程度改善されたのか、能力低下(例えば今まで30分デスクワークを行うと痛みが出ていたのに今では1時間以上継続して行える、などなど)が改善されたなどの項目を評価することができます。

大まかにPICOを説明するとこんな感じですが、ここで大事なのがこれらの要素から考えられる『質問』が何なのか?ということになります。先ほど述べたように、今まで自分の中で何かを調べたいと思っていた時、漠然と“頸部痛に対する理学療法”とだけ検索していたところから、『オフィスワークを行っている若年~中年女性の頸部痛に対する理学療法として、DNFトレーニングをマニュアルセラピーに組み合わせることは痛みを改善するのに効果的か?』というような具体的な質問が出てきます。

そして、こちらの質問よりもっと具体的な検索ワードとして“DNF トレーニング、頸部痛、若年~中年オフィスワーク女性、マニュアルセラピー”などが思い浮かんでくるかと思います。

これは本当にただの一例にしかすぎませんが、僕らが日々の臨床を行う上で本当に多くの質問・疑問に対面すると思います。そういった時これらのことを少し考慮していくと、今までよりももっと具体的な質問ができ、さらには具体的な答え(治療方法やその効果の検証)が見つかるようになるのではないかと思います。

どういう風に文献を読んでいくかなどについてはこれかまたさらに詳しく勉強していくので、またそれらについてもいつか皆さんとシェアできればなと思います。

長くなりましたが読んでいただきありがとうございました!!