X−線の疑問。。。 | Aussie Physio (オーストラリアの理学療法)

Aussie Physio (オーストラリアの理学療法)

日本で理学療法士として働いた後

オーストラリアでPhysiotherapist (理学療法士)になるために渡豪

そんな日々の中での気づき

今日はX-線に対する疑問についてです。

日本で腰痛や頚部痛など脊柱に対する痛みに対してどれほどX-線が勧められているのか、または実際に撮られているのかということを最近疑問に思っています。

オーストラリアの理学療法士として求められることの一つに、Red flagsの見極めという役割があります。Red Flags とはSerious underlying conditionsとされており、単純に言えば理学療法適応でない、もしくは理学療法による改善が制限されている疾患や症状のことです。

これらの中には、感染、骨折、悪性腫瘍、動脈疾患、馬尾症候群などなどが含まれています。

腰痛を例にとると、こちらでよく出会う急性期の非特異性腰痛の場合、発症から12週間以内で、さらにRed flagsを示す徴候が認められない場合にはX—線は一般的に推奨されていません。さらに、X—線の影響として、急性非特異性腰痛患者において6週間と1年の時点で心理的に若干の安心感を与えることができるものの、身体的機能、疼痛、障害レベル、他職種への推薦(Dr)などに影響はないとされています(この若干の安心感を与えることが大事と考えることもできますが…難しいところです)。

また、あるデータによると急性の非特異性腰痛患者のX-線ではまったく異常なしか、もしくは若干の退行性変化がクリニックに外来として来院する95%の患者に認められ、急患としてくる患者の86%に認められるとの報告があります(結構多い確率だと思いませんか…?)。

こういった現状にも関わらず、ある研究によるとアメリカで1998年から2000年の間の3億件の急患患者のうち、18%(54万件)がX—線を行っており、これらの患者のほとんどがRed Flagsを持ち合わせていなかったそうです。また、アメリカの救急外来で働くクリニシャン(医師)の意見として、急患の患者さんの安心感を得るために33%がX-線をオーダーしたという報告もあります。

X-線を撮ることがもちろん悪いこととは思いませんが、腰痛を有する患者さんの中でたまに「私の腰椎は退行性変化(mild degenerative changes)/もしくは若干のヘルニアがあって、それが痛みの原因なんだ。もうこれは手術しないと治らないんだ」と本気で信じこんでいる患者さんにたまに遭遇します。

近年の技術の進歩によるMRI やCTスキャンの発達はさらにこれらの退行性変化をより正確に摘出し、それがさらに患者さんのmisbelief (間違った信念)に繋がるという研究/報告もでてきています(もちろん中には本当にそういったことが痛みの原因となっている場合もありますが…)。

こういった信念を持った患者さんの評価を行った場合、痛みの性質も中枢性感作(central sensitization - 例えば痛みの性質がメカニカル/特定の動作によって引き起こされるものではなく、何をしても痛いや、しびれや鈍麻が神経根の圧迫などが画像上見つからないのに認められるなど)によるものを助長している印象を受けることがあります。


日本とオーストラリアの理学療法の違いとして、患者さんが直接理学療法士を受診することができますが、ここで理学療法士が患者さんのRed flagを見極めることができるかできないかは、医師の負担軽減や医療費削減などの助けになるのではないかと感じています。

現在、日本の理学療法士が診断権を持つことは難しいように思われますが、いつの日かこれらのこと、またはこれに近いこと(例えば医師の問診に理学療法士が同行し、動作分析や一定の評価などを共に行うことなど)ができるようになれば、現在の医療が変わるのではないかなと考えています。

長くなりましたが、最近はそんなことをこちらのクリニックで働きながら感じさせてもらってます。みなさんはどう思いますか?