義姉、モロッコに旅立つ。 | イタリアでモロッコごはん

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イタリア在住 リツコがモロッコ人と結婚を決めた途端、介護同居生活が始まり今に至るドタバタと、美味しいモロッコ&地中海料理について語ります♪

今朝、8時にA氏が奥さんと迎えに来てくれる

とのこと。

 

 

前回は1時間も遅れて到着したA氏なので

8時には来ないと解っていながらも

万が一、8時に用意出来ていなくても困るから

一応、義姉を車椅子に乗せて待つ。

 

 

 

 

 

来ないし。

 

 

 

もう9時だ。

 

 

9時10分にインターホンが鳴った!



12時過ぎのボローニャからのフライトで

間に合うのか?



普通なら無理だけど

障害者アシスタントサービスで

行列無視で、ぶっちぎりで間に合わせるのだ口笛

 

 

私はエレベーターで義姉を下に降ろし

A氏に引き渡し、車に乗せてもらっている間

スーツケースを取りにまた家に戻る。

 

 

また下に降りると

もう義姉は助手席に座らせてもらっていた。

 

 

私はA氏の奥さんに

義姉のパスポートとパニーノと

万が一、低血糖でフラ付いた時のための

バナナが入った紙袋を手渡した。

 

 

昔のガタイの良かった義姉に比べると

ひとまわり小さくなった気がする。

 

 

そして義姉は私に手を振って出発して行った。

 

 

 

 

私は家に戻ると

義姉が食べられなかったリンゴ2切れを片付けた。

 

 

昨日から、義姉は

殆ど食べ物が喉を通らなくなっていた。

 

昨夜の夕食時、義姉はジッと

お皿の食べ物を見るのだけれど

ほんの一口ずつ食べただけで残していた。

 

 

今朝はパンを1/3切れ食べただけ。

 

私はリンゴ半分を3等分して切って渡したけれど

その一切れしか食べなかった。

 

 

こんなんじゃ、低血糖で倒れてしまうよ!

と、以前あげたのに義姉が大事に取ってあった

ボンボンチョコレートを一つ食べな!とあげた。

 

 

すると、

「酔っ払いながら旅立つようだな。」

と、コレは一つ食べた。

 

 

そしてそのボンボンチョコを手荷物のバッグに入れて

「子供達にはあげちゃいけないよ!」

と、自分だけで食べるように

バッグの奥の方に隠した。

 

 

2日前から37度〜38度の熱が

上がったり下がったりしていた。

 

 

気力だけは元気にしているけれど

少しずつ、少しずつ

義姉の身体は病魔に蝕まれていた。

 

 

 

私は義姉が発って行ったことが

信じられないまま、外に出た。

 

 

あいにくの雨だった。

 

 

そして、ボロボロだった私の話を

昔から聞いてくれていた親友に会って

今日までの展開を話した。

 

 

彼女は、最期はホスピスに入れるようだ

と言った私のことを、いたく心配して

「看取りまでの心構え」のような本を

貸してくれようとしていた。

 

 

 

それなのに

信じられないことに義姉は

今日までなんとか旅立てる程元気でいて

 

凄いモロッコ人ネットワークのお陰で

瞬く間に出発していったことに

 

友人は目を丸くしていた。

 

 

 

「りっちゃん、す、凄い展開だねポーン

 しかも、看取り、しなくて良いなんてサイコーじゃんびっくり

 なんか、神がかっている展開だねバレエ

 

 

そして私は20年振りに義姉から解放されたのだ。

 

私は、この解放記念日に彼女と過ごしたかったのだ。

 

 

彼女と話しながらも

まだ、私は解放されたことが信じられなかった。

 

 

どんな気分かって?

 

 

スミマセン、サイコパスなんで

義姉に対する感情は、あまり動かなかったのね。

 

 

私は、いつも感情移入しないように

出来ることをやっていたので

最後も、ハイ、チャオ〜!と軽くお別れ。

 

 

 

ただ、家に帰ってきて

もう、オムツ替えや、排便の心配をしなくて良いこと。

 

夫が疲れて帰ってきているのに

夕食前は彼が着替えやオムツ替えをやっていたこと。

そして、彼も、もうそれをしなくて良いこと。

 

 

夫が家に帰ってきて

義姉が何事もなく、無事モロッコに着いたとのこと。

 

 

 

「リツコ、今まで助けてくれて本当にありがとう。

 僕は君になんてお礼を言ったら良いか解らないよ。

 

 君に幸あれ

 君のご両親に幸あれ

 君の妹さんに幸あれ

 君を囲む全ての人々に幸あれ」

 

その後、アラビア語でブツブツ祈り出した時に


私の目から、ツーッと涙が溢れおちた。

 

 

本当に、私達、解放されたんだ.....ハートのバルーン

 

 

こんな解放劇は、私は想像したこともなかった。

 

また、一悶着あるものだと思っていた。

 

それが、みんなが笑顔で

誰も悲しまず

晴れやかな顔で

義姉が帰りたい場所へ帰って行ったのだ。


まるで、春風に飛ばされる

桜の花びらのように、軽やかに。




今年の京都通りの桜🌸

 

 

 

夫が

「ほらね、良いことをすれば、こういう展開になるんだよ。」

と言った。

 

 

私達は、ただ

出来る限りのことは、やり尽くした

という、満足感に満たされながら神に感謝したスター