私は先日、仕事でボローニャに行く機会があった。
この日もボローニャは通過地点で
目的の地はもっと先にあった。
これはいつもそうだった。
私に取ってボローニャは
いつもどこかに行くための通過点だった。
昔、友人がウルビーノに住んでいたことがあったので
ウルビーノという街に足を踏み入れた途端
フィレンツェのように好きになってしまった。
私は、小さくて洗練された
散歩しているだけでワクワクしてしまう
ピンクっぽい街に惹かれた。
だから、ウルビーノに通うため
いつもボローニャで電車を乗り換えていた。
夫と結婚した後は
ボローニャの果ての方に
モロッコの領事館があるので
車で乗りつけるだけで、中心街を夫と歩くことはなかった。
そして先日の仕事中に気がついたのだけど
私は、ボローニャの街をしみじみ散策したのは
今回が初めてだということだった。
なんと、まぁ、
イタリアに20年以上もいるのに
こんな近場のボローニャで
ゆっくり散策やお食事をしたこともなかったなんて!
自分でも本当に驚いてしまった。
昔、フィレンツェで習っていたお茶のお師匠が
ボローニャでイベントがあるから
リツコちゃん手伝って!と言われて
お着物を着てお茶のデモンストレーションをしたことがあった。
だけどその時もイベント会場に直行してしまったので
ボローニャの街は歩かなかった。
今回はお仕事の帰り道、
ボローニャからフィレンツェへの乗り換えがあったので
是非、ボローニャで降りて街を散策して
ボロネーゼ(ミートソース)のタリアテッレを一皿頂いてから
フィレンツェに向かいませんか?
と、お客様と一緒にボローニャの街を歩いた。
お客様は分刻みのスケジュールをこなされていたので
ボローニャでは時間に余裕があるからと
お土産のチョコレートを買い求めていた。
Venchiというチョコレート屋さんで
フィレンツェにもあるのだけれど
フィレンツェでも行きたいところがワンサカあったから
お土産を買ってしまって安心しておきたかった。
そこで選んでいる時に
店員さんが試食にどうぞ!とチョコレートをくれた。
パスクワ(イースター)が近いから
卵型の可愛い銀紙に包まれたクレミーノという種類のチョコだった。
その中でも、キャラメルとかピスタチオとか
色んな味があった中、私はキャラメルを選んだ。
お客様はすぐに味見して、お!美味しい♪と言って
美味しさを確信しながらそのお土産を買い求めていた。
私は、このすぐ後にボロネーゼを食べるので
甘いものは欲しておらず、
後でカフェと食べよ!と、ジャケットのポッケに入れた。
私はボローニャの街をよく知らないまま歩いているので
地元民っぽいオジサンに
「ボロネーゼ食べに行きたいんだけど、美味しいお店はどこですか?」
と聞いたら
そこを左に曲がったところのお店だよ!
と言うので、それに従って、テラス席に案内された。
私達は
tagliatelle al ragù alla bolognese を注文。
ラグーとは、ミートソースのこと。
ボローニャ風ミートソースのタリアテッレ
タリアテッレはきし麺のようなパスタフレスカ
乾麺ではないフレッシュな手打ち麺だ。
私達はモデナのランブルスコも飲みそびれていたので
パスタのお供にランブルスコも頂いた。
ランブルスコとは赤の微発泡ワインで爽やかな味わい。
運ばれてきたタリアテッレはモッチモチで
弾力のある麺で最高に美味しかった。
濃厚なボロネーゼソースを絡めながら頂き
ランブルスコでお口をスッキリさせた。
そうだ、ボローニャやエミリア・ロマーニャ州は
豚製品が美味しい街だから
夫とも近いのに足を延ばしたことのないのだろう。
モルタデッラとかパルマの生ハムとか
ボロネーゼのお肉も豚が混入しているものは嫌がるからね。
モロッコ人の夫とはどちらかというと
海沿いの街を散策するのが気分が良い。
美味しい魚介類を選んでいれば間違いがないからだ。
さて、大満足のままボローニャの街を後にし
フィレンツェに着いた。
私達はまだ、ひと仕事あったので
色々用事を済ませてタクシーで目的の場所へ向かった。
私は何も考えずにジャケットのポッケに手を入れた。
すると、何となくホラーな感触を指先に感じた。
ウワッと思わず手を引っ込めた
すると、その指先には
濃厚な焦げ茶色の流動状のものがくっついていた。
私は一瞬、固まった
匂いを嗅いでみて解った
Venchiでもらったイースターエッグチョコが
溶けていたところに私が指を突っ込んだのだった
ウワァオチョコもらったことすら忘れてた
私はまだ仕事中で
そこで騒ぎたくなかったので
ティッシュを一枚引っ張り出して
指を包み込み、トイレに退散した
あぁ、コットンではない
ナイロンのジャケットで良かった。
これならシミにならないし、
ポッケの中も撥水コーティングされているので
チョコが外に出てくることもないし。
私はあらかたチョコレートは取り去ったけれど
残りのこびり付いたチョコレートは放置した。
こう言うのは、一度冷やして氷を当てて取ると
パリパリ取れる場合があるからだ。
私はサイコパスなのでこの一連の行動を
無表情でこなす。
全く、慌てない
きっと、私が溶けたチョコレートに
指を突っ込んでいたなんて
誰も気が付かない
よく、まぁ、そんなに冷静にいられるわね
と言われる。
私は大慌てして
他の人に気を遣わせる方が面倒くさいので
無表情で、独りで淡々と済ませた方が気がラクだからそうするのだ。
そして昨日までそのチョコレートで汚れた
ジャケットのことを忘れていた
物忘れも甚だしい。
ジャケットのポッケを確認してみると
良い感じにチョコは固まっていた
氷を当ててみたら
普通のチョコだったらパリパリ取れるだろうけれど
クレミーノという、生クリーム配合のチョコだったので
完璧には剥がれてくれなかった。
私は、取れるチョコだけナイフでカリカリ剥がして
後は食器洗剤で擦って汚れを落とし
その後、ジャブジャブ洗剤で洗った。
あの指ツッコミ事件が3月の初めのことだったなんて
信じられない.....
なんて日々は、瞬く間に過ぎていくのだろう.....
いつも思うけれど、こんなんじゃ
すぐにお婆ちゃんになっちゃうよ!
毎日を大切に生きよう。
自分に与えられた時間に感謝して、
なるべく手帳にメモして、物忘れせずに物事をこなして生きよう