気ままに吐露トロ -4ページ目

気ままに吐露トロ

あれこれ好きなことを、覚え書き。

あのね、それでね、と休みなく動く唇を見つめていたら、話が終わったわけでもないのにそれがふと止まった。
「花沢類」
呼ばれて、視線を呼んだ声の主のそれに合わせるようにあげれば、なんだか困ったような、不審そうな色をのせている。
「…聞いてる?」
おそらく訊きたいことはそれではないだろうに。
「聞いてる」
だから、そう答えるついでに〜だったんでしょ、でどうしたの?とちゃんと聞いていたことを証明して続きを促してやれば、閉じていた唇にさらにきゅっと力が込められた。
「じゃあ…」
往生際悪くなおも言葉を濁しながら、それでもやっぱり気になっていたらしく、分かっているのに俺がわざと対牧野にのみ通用する無垢を装った視線を向けてやれば、案の定、砦は陥落する。
「何、っていうか、何処、見てたの?」
さすが牧野、直球だ。
じゃあこちらも、直球を返すだけ。
「あんたの唇」

 

「…へ?」
ほんの僅か、多分、10秒にも満たないくらいの空白のあと、眉間に皺を寄せながら発せられた音がそれだった。
「牧野の唇って、形がいいよね。動くの見てるの、飽きないもん」
飽きないんじゃなくて食べたくなるってのが本音だけど、実行するのはまたあとで。
さすがに彼女お気に入りのカフェでそれをしたら、金輪際誘ってもらえないどころかしばらくは音信不通も覚悟しなくちゃいけなくなるだろうから、それは勘弁願いたい。
「そそそそそそんなことっははははははなざわるいにいいいいいいわれるとっ」
りんご?トマト?いや牧野はいちごが好きだったんだっけ?
頬だけではなく、首筋まできれいに朱を佩いて、やっぱり美味しそうで食べたくなるんだけど。
「俺に言われると、んー、迷惑?」
絶対にありえないだろう回答を、それでも牧野が弱いと分かっているわずかに切なさを含んだ視線と表情でわざと訊く。
「そそそそそそう、じゃっ…な、ないっ、ないんだ、けどっ」
真っ赤になって、焦りまくって、なのに俺を責めるのではなく、むしろ申し訳なさそうにするのが、どうしようもなくかわいい。
だからいつも、つい、からかってしまうんだよなあ。
うん、牧野が困るのは、俺をそうさせる牧野自身の所為、自業自得だよね。

 

「…嫌味にしか聞こえない」
ぶすくれたお姫様は、俺に背中を向けたまま。
あきらや総二郎がいうには、女の子は『かわいい』とか『きれいだ』とかいう言葉に弱いらしいのだけれど、むしろ牧野には『完璧すぎるあんたたちに言われても信じられない』と不評だ。
本当にちゃんと本心からそう思ってるんだけどな。
唇だけじゃなくって、黒目がちですぐに潤んで揺れる瞳とか、控えめサイズだけど形のいい鼻とか、すぐに赤くなるすべらかな頬とか、すりすりしたくなる額もぱくっと噛みたくなる耳も舐めつくしたい首筋も…うん。
いつからか花の四人組と呼ばれるようになった、俺を含めた幼馴染みの4人。
物心ついた時から静や椿ねーちゃんというハイスペックな女性が身近にいて、どんな遺伝子のいたずらか、それぞれに特徴はありつつも老若男女問わずから褒め讃えられるような容姿を生まれ持ち、ありがた迷惑なことに家柄もよく、ついでに頭の中身も身体能力も平均以上だったようで叩き込まれた帝王学やら護身術やらのおかげで、向かうところ敵なしだった。
ナルシストではないけれど自分たちだってかなりの高レベルだという自覚もある俺たちだから、美醜に関してはその基準はかなり厳しいという自覚はある。
その俺たちをして、美女を侍らせることに関しては誰にも引けを取らない総二郎やあきらに『磨けば光る』と言わしめ、どこまでも俺様な司を初心な少年に変え、静ですらどうでもよくなるほど俺を夢中にさせているというのに。
ほんの少し、言葉の使い方を間違えてしまったようで、帰りの車の中でもドアにぴったりとくっつくように座り、こちらには背中を向けたままでいる牧野。
窓ガラスに映る顔はさみしそうで、だから今すぐにでも抱き締めたいのだけれど、いや、抱き締めてキスをしてくにゃくにゃになるほど愛したいのだけれど。
ちゃんと、俺が言うことに嘘はないって、いい加減信じてもらいたいから。

 

「牧野」
「…なに」
微妙な間はあったけれど、それでも呼びかけに返事をしてくれたことでうれしくなる俺って、本当に牧野バカだよね。
アパートまで送って、自然に部屋の前まで送り届けて、いつも通りに一緒に中に入って。
はじめの頃は運転手さんに申し訳ないからって、わざわざ蓋付きの紙コップを買ってコーヒーを差し入れていた牧野。
花沢に雇われてからどれくらいになるのか知らないけど、その時の驚きようを見たら、それが初めてだってのがまる分かりでうっかり爆笑しちゃったよ。
今は、俺がドアのところで引き返して車に戻らなければそのままお泊まりコースだろうと、慣れたものでさっさと帰ってくれるほどになった。
一介の使用人である運転手でさえ、そこまで分かってくれているというのに、なんで本人はこんなにも鈍感なんだろうね?
「何が、ダメ?」
だから、端的に聞いたのに、あ、眉間にシワがよってる。
自覚はないけど、いつもあいつらに『言葉が足りない、単語で話すな!』って言われるから、もうちょっと修飾語を足さないといけないかな。
「俺がかわいいとか言うと、牧野、いつも怒るよね。言っちゃ、ダメなの?」
ミニチュアテーブル、卓袱台っていう名前なんだって牧野に教えてもらったものをはさんで、真面目に訊く。
座る前に用意してくれたマグカップの紅茶は、牧野がよく行くスーパーで買う安いティーバッグのもので香りなんてないのだけれど、牧野が作ってくれたというだけでその湯気でさえも優しく思えるんだってこと、きっと分かってくれないよね。
「…だって」
お揃いであることを喜んでることすら知らないだろう牧野は、マグカップを両手でぎゅっと握って、小さく言った。
「花沢類は、王子様だもん」

 

…ごめん、牧野。
文章読解力はかなりあると自負しているし、先を読んだり予想することは得意だし、牧野のことなら何でも分かるって自信もあるけど、今の会話の流れからその答えが出てくるとは思ってなかったよ。
自分でもびっくりするくらい、牧野の生活に違和感なく溶け込んでいる自覚はある。
以前、司が約束だからと牧野が用意した鍋料理を食べに来たらしいけれど、やっぱり最後まで合成映画みたいな違和感があったって泣き笑いのような表情で牧野が言っていた。
俺はその点、パパさんたちがいた時からけっこう頻繁に訪ねて来ていたし、もともとラフな服装が好きだったこともあって、不必要な威圧感とか金持ちがどうというような印象は与えてないはずだったんだけど。
しかも『王子様』って、なんで?
それがなんで、不機嫌な原因になるの?

 

「ピンチの時の花沢類」
いい加減待ちくたびれてしびれを切らした俺が問い質そうと息を吸い込んだ、そのタイミングでお姫様はそうのたまった。
「いつだって、どうしようもないってくらい大変な時にはなぜか、花沢類が助けてくれたでしょ」
司が始めた赤札はもちろん、確かに司の母親の嫌がらせを受けた時も、そして司自身から突き放された時も、確かにそばにはいたけれど、助けた自覚はない。
「うれしかったし、ありがたかったし、だから頑張れたけど」
女の子の夢の王道として、大変な時に、颯爽と白馬に乗ったかっこいい王子様が宝塚もかくやという衣装で蹄の音も高らかに現れお姫様を救うというのは、ありえないからこその夢であるそうで。
「だから、花沢類も、私にとっては夢なの。夢みたいなほど完璧な人に褒められても、信じられない」
乗馬は趣味程度でなら出来るし、衣装だってあきらほどではなくともまあ着こなせると思うけど。
「俺、夢なの?」
そんなの、ヤだよ。
ちゃんと牧野のいる現実にいさせてよ。
あ、逆でもいいか。
「じゃ、牧野も俺の夢の中においで?」
いつもバイトで忙しくて、誰よりも超現実をひた走ってる牧野だし、むしろ夢の中を彷徨う俺を元気いっぱい邪魔してくれたりもするけれど。
ふたりでゴロゴロしてる時は本当に幸せだなあって思ってるのに。
「無理!」
ってそんなきっぱりはっきり即答しないでよ。
「花沢類みたいにきれいじゃないし、スタイルもよくないし、かわいくないし、貧乏だし…」
「かわいいよ」
「だからッ」
何だろう、ちっちゃいのに一生懸命きゃんきゃん吠えてるわんこ?
「やっぱ、かわいい」
だからうっかりさわりたくなっちゃうんじゃん。
ギュウギュウに抱き締めて、髪に頬ずりして、なんだかいろいろ騒いでジタバタしているからキスでおとなしくさせて。

 

「かわいいって見た目はもちろんだけど、それだけじゃないでしょ」
性格とか考え方とかちょっとした仕草とか。
牧野バカな俺にとっては、牧野のことならどんなに些細なことでもかわいいと思えちゃうんだからね。
いや、かわいいっていうより、美味しそう?
英徳じゃ、女性とは化粧しているのが当たり前なくらいだから、きっとすっぴんの牧野はそれと比べて否定するんだろうけど、それ、間違ってるからね?
全員同じラウンドに立たせたら、すっぴんでも化粧をしてても、絶対に牧野がぴか一なんだから!
何より化粧をしないから肌はすべすべモチモチでずーっと触っていたいくらいだし、パーマやカラーリングとは無縁の髪は艶サラだし、家族のためにいつも頑張ってる手指はちょっと荒れてたりもするけれど、それですら牧野の勲章のように思えるんだよ?
スタイルは…まあちょっと痩せぎす感が強いけど、頭も骨の中もスカスカな女たちが必死にダイエットしてるみたいに不健康なわけじゃなく、食べてる分以上に心身忙しくしてるから太れないんだろうから仕方ないけど。
きっとお姫様みたいなドレスを来て、仁王立ちしてる牧野だって、閉じ込めて誰にも見せたくないくらいかわいいよ?

 

腕の中から上目遣いで睨まれて、なんだかそれがおねだりしているように見えるのは錯覚じゃないはず。
そしてなんとなくまだちょっと不満そうに尖らせてる唇がアヒルになっててやっぱりかわいくて、ここはカフェじゃなく牧野の部屋で他に誰もいないから、だから遠慮なく食べに行く。
かわいい上に美味しい牧野が悪いんだからね。
だからさ、いい加減俺の気持ち理解してよ。
悪いけど、俺は夢の中に住んでる王子じゃなくて、あいつらに言わせるとむしろ悪魔なんだってさ。
俺が本気になれば、司は怯えるし、総二郎は遁走、あきらでさえ諸手を上げて我関せずを表明するんだよ?
だから牧野、そろそろ降参して、俺のところにおいで?
ごちそうさまなんて不要な、食べ放題な幸せを満喫しよ?

不思議だったのは、ジフとジャンディのふたりだけの間であれば、『声』という音がほぼ不要だったことかも知れない。
もともとお互いが自分の一部でソウルメイトだと公言していたことを証明するかのように、ふたりだけの空間では、ジャンディが何かを言おうと僅かに口唇を動かすだけでジフがその意思を読み取って返事をしたり行動したりということが、あまりにも自然な態度で繰り広げられていたのだ。
…ただ、その会話で『音』になっているのがジフの声だけである、という不自然さを除けば。
外出が憚られるジャンディのために、F2は以前よりも頻繁にユン家を訪れるようになっていた。
特にイジョンは、海外へ行く予定の日が迫っており、待たせてしまう相手がジャンディの親友であるから余計に、気になっていたようだ。
[いらっしゃい]
にっこり笑うジャンディの、最初の一言は口唇を読まなくても分かる。
が。
[コーヒーでいいですか?それともお酒とかの方がいいです?]
以前と変わらない笑顔で、ジャンディが何かを訊いていることは分かっても、詳細までは把握出来ないのが現状だ。
それなのに、
「ああ、今日は車(運転手)付きみたいだから、大丈夫だと思うよ」
ジャンディの背後から言うジフは、F2にとっては最早四次元どころの存在ではない。
「…何?」
ふたりの訝しげな視線を感じたのだろう、キッチンへと向かったジャンディの背中を見届けてからジフは面倒そうに訊いた。
「何、じゃなくてさ」
どう言ったものか悩むイジョンよりも、
「なんでジャンディの言ってること、分かるんだ?」
直球で訊いたウビンの方が勇気はあるのかも知れない。
「なんで、って…」
訊かれたジフは答えを探すように暫し黙ったが、
「ごめん、なんで分かんないのかが、分かんない」
などという答えが返ってきた時には、F2揃ってぐったりと肩を落とした。

もしかしたら、ジャンディの症状が改善されないのはジフの所為なのではないかと疑いを持ったのは、やはりウビンだった。
ジャンディとしては、家族に心配をかけていることはもちろん、通学やバイトなどの日常生活を今まで通りに出来ないことが気にかかっていたようだった。
もともとジャンディは、他人を頼ることをしない。
もしかしたらそれは庶民としては当たり前のことなのかも知れないが、F4としては常にあれこれ必要なことは事前に処理してもらうことが当たり前で、面倒なことを頼む必要がなかったため、その判断の基準が不明なのだ。
特にジュンピョはオレ様体質だから、頼まれることはまず否定、何か自主的にすることは全て『オレ様がやってやっている』というのが基本だ。
だからこそ、ジャンディがその悉くを拒否した時には、見事なほどに荒れまくったものであるが。
イジョンとウビンに関しては、対女性であれば楽しませてもらうというのがスタンスであるから、飲食代を支払うことは男性として当然だと躊躇わないし、逆に身体を求めることもその代価として受け取るのが当前で。
そういう意味でもF4は、無償で、ボランティアなどではなくただ好意で何かをする、ということには不慣れであった。
ジフはそもそも、他人と関わることさえ皆無だったのだが。
ともあれ、ジャンディの声が出ないのは精神的なものが要因である方が濃厚だと知ってしまえば、ジャンディが傷つかないことを大前提として、でもその原因を取り除いてやりたいと思うのは、自分たちをいい意味で大改革してくれた恩人には、当然のことだろう。
気にしつつも己の道を切り拓くために渡欧しなければならないイジョンのためにも、ウビンはなるべく早急に、出来る限りのことをするつもりだった。
そんな建て前が不要なほど、ウビンにとってもジャンディは大切な人でもあるのだけれど。
だが、肝心のジフが驚くほどジャンディの思考や行動の先回りをしてあれこれと、それもごくごく自然に、さも当然のように世話を焼くから、ジャンディは断るタイミングを掴めないというよりも受け入れるのが当たり前のようになってしまい、これではジャンディは声がなくとも不自由が全くないわけで、取り戻そうという努力さえもしなくなってしまうのではないかとウビンは心配になって来たのだ。
そしてそれを分かっていて、ジャンディを手放したくないジフはわざとそうしているのではないか、とも。

「ジャンディ、どうよ?」
ジフが居そうな時間を見計らって訪れる時のウビンの第一声は決まっている。
たいていはイジョンと都合を合わせた週末の午後が多い来訪だが、今日はめずらしく近くまで来たからと、わざわざジフに居所を確かめた上で仕事からの帰りに寄ってくれた。
F4のマスコット的存在になってしまったジャンディを心配しているのはもちろんだが、お人好しで心配性である彼は、同時に苦悩を抱える親友の状態を気にかけているのだ。
「元気だよ」
気負わずにそう言えることは、ジフにとっては至上の喜びだ。
お互いに想い合っていたにも関わらず、そうと気付かずに時間を浪費した。
ジフはソヒョンを、ジャンディはジュンピョを、誰よりも大切な人なのだと思おうとして…出来なかった。
心の思うままに相手を求めても、最初から叶う希望などないと思い込んでいた。
なのに、今。
[先輩!おじいさまが今日は早く帰れるって]
手にした携帯電話の画面を見せるように持ち、うれしそうに小走りで寄ってきてくれる。
大学と財団と診療所と掛け持ちしている現在のジフは、当然最優先されるべきは大学ではあるが、時間に余裕があったり講義の合間に都合がつけば財団の方にも顔を出したりしており、時間の許す限りほぼ毎日診療所にも寄るようにしているので、平日の帰宅時間はけっこう遅くなってしまう。
そしてジフが未だ一人前でない以上、祖父ソギョンが主導者であり、老齢な上に心臓も万全とは言えないが、それでもすべきことは減ることがないから毎日の帰宅は深夜に近いことが多い。
だから、広い邸にジャンディがひとりで過ごす時間は長く、ジフやソギョンがたまに早く帰宅したり、休日もゆっくりと過ごすことが出来る時にはまるで子どものようにうれしそうにはしゃぐ。
[この間釣ってきてくださったお魚があるし、メウンタン(辛口の魚のあら汁)がいいかな?あ、でももう遅い時間だし、トゥブチゲ(豆腐鍋)の方が胃にもたれないと思う?]
どうやら最近は体調が良いせいかけっこう忙しくしているおじいさまからのメッセージがよほどうれしかったのか、ウビンがいることにも気付かないほどに浮かれているらしい。
「ジャンディが腕を振るってくれるなら、何でもいいんじゃない?」
[そんなこと言うならお粥にしちゃうから!]
「それこそ消化に良くて喜ぶかも」
[もう!先輩には訊きませんっ!]
ウビンからはジャンディの背中しか見えず、従って楽しそうな雰囲気は察することは出来ても何を言っているのかはさっぱり分からない。
が、ジフがからかい混じりにではあっても微苦笑を隠さずに話しているのを聞けば、何やらいいことがあったのだろう。
会話に入れないウビンに気付いたのか、ジフが
「食べてく?」
と訊いて初めてジャンディはそこにウビンがいることに気付いたらしく、あわてて振り向き、おそらくはいらっしゃいかごめんなさいか何かを言いつつぺこんと勢いよく頭を下げ、その拍子に持っていた携帯を落っことし、焦って拾おうとしゃがんだ時に花瓶の置いてあるサイドテーブルに額を想いっきりぶつける。
「ジャンディ、落ち着け、俺は逃げたりはしないから」
パニックに近い状態のジャンディをジフがやんわりと抱き締めるのを見ながら、ウビンは握った片手を口にあてて笑いを堪えた。
緊張したり焦ったりすると口数が増え、挙動不審になるジャンディのクセは知っている。
[ああああの、気付かなくてごめんなさい!ジフ先輩と、大事なお話があるんですよね?もしもお時間があるのなら、おじいさまも今日は早く戻られるみたいなので今からちょっと何か作ろうと思うんですけど、よかったらご一緒にどうですか?あ、でもふたりで話したいっていうのなら、お酒とおつまみくらいなら用意出来ますし、どうしましょう?]
…知ってはいても、音にならずにぱくぱくと忙しないほどに動くジャンディの口元を見ていたって、読心術が出来るわけでもないから、何を言っているのかさっぱり分からずにウビンは視線をジフに移動させる。
と。
「いるのに気付かずごめん、おじいさまもすぐ帰るし何か作るから一緒にどう?…だって」
ジャンディが言ったであろうことの要点だけをまとめたにしても短すぎやしないかと思い、同時にジフにとっては不都合なことを省いたのだろうと分かり、自分たち幼馴染みや姉のようなソヒョンやジュニに対してさえ見せなかったジフの、子どものような独占欲にうれしさを感じるのはきっと、ジャンディに対してだけは傍若無人なジュンピョも不承不承ながらも妥協していたのと同様、人形のようだったジフも人間っぽくなってくれるだろうという期待があればこそ。