恋したくなるお題(嫉妬まじりの恋のお題) | 気ままに吐露トロ

気ままに吐露トロ

あれこれ好きなことを、覚え書き。

其の漆拾。

01. 「友達」でも油断しないで

相も変わらず、連休になるとやってくる。
もちろん事前連絡などなく、不在だったらどうするんだという抗議も、『それはそれでしゃーないやん』とあっさりいなす。
だからむしろ、もしかしたら、来てくれるかもと逢瀬を期待しているのは自分だけで、ヤツにとってはそうじゃないのかもと不安になる。
「新一って、馬鹿だよねえ」
幼馴染みが、容赦ない意見を披露する。
「だってさ、東京=大阪間だよ?交通費だって馬鹿にならないし、受験だってあるだろうに、それ以上に新一のこと、最優先にしてくれてるってことでしょ?」
そうかな、好きなのはオレじゃなく、都心部で起きる迷宮入りしそうな事件だろ?
「和葉ちゃんに、『友達』でも油断しないでって、言っとかないとね」
ため息とともに言った幼馴染みの言葉に、なんとなくムッとする。
それがなぜなのか、分からないままに。

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其の漆拾壱。

02. 手を振った先

「ほな、またな」
いつものように、ひらりと手を振った先に、大きな瞳をこぼれ落ちそうなほどに見開いて睨みつけるやつが一人。
断っても、それでも面倒そうな素振りをしながらも、いつも見送りをしてくれる。
バイクの時は角を曲がるまで、公共交通機関の時には最寄りかもしくは気が向けば東京駅まで。
しかも本人はバレてないつもりだろうが、こちらの姿が見えなくなるまでということも分かっている。
が、こんなふうに睨まれるのは初めてだ。
「もう来んな」
言われた言葉も、衝撃的だった。
「な…」
返す言葉を考えつく前に、瞳は閉じられ、そのまま細い背中を視界から消されてしまったのだった。

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其の漆拾弐。

03. 以前は気にしなかったのに

3日と空けずに送られてきていたメールが来なくなってから…と数えるのも業腹で、手にしていた携帯をぽいとベッドの上に放り出す。
試験中だろうが部活の合宿中だろうが、途切れることがなかったそれを、心待ちにしていたことを悟られるのがいやで面倒そうな態度や口ぶりで応対していた。
それでも、互いの幼馴染みたちが意味ありげな視線を向けつつクスクス笑いを交わしていた、その意味を分からないほどもうガキじゃなくて。
『来んなとは言ったけど、連絡寄越すなとは言ってねーだろーが』
我が儘ないい分だとは、自分でも分かっていたけれど、それでもと高を括っていた。
起きた事件の概要だけでも教えろと、言ってくると思っていた。
素っ気ない態度を取っても、いつも一緒にいた幼馴染みと同様、何をしても許されると思い上がっていたのか。
以前は気にしなかったのに、隙を見ては携帯を確認し、着信も受信もないことにがっかりする。
肺を空にするほど大きなため息をついて、そこに新たな空気を送り込むことの失敗したのは。
「よ」

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其の漆拾参。

04. 隙だらけの君

「目ん玉、落っこちるで?」
うっかりドジ踏んで、気軽に連絡ができない状態に陥って、しばらく。
『蘭ちゃんがな?』と和葉経由で様子は聞いていたものの、身動き出来ない状態は歯痒さ以上の何かがあって。
だから、許可をもらい次第家にも戻らず、新幹線に飛び乗った。
本当なら一番速いバイクという手段をとりたかったのを我慢しただけ、褒めてもらいたい。
相変わらず呼び鈴に応答はなく、なのに玄関の施錠は開いているという無防備さで、ちっこくなってたときの方がマシやったやんかとため息をつく。
「な…んで」
探偵は、盗賊や忍びではない、なのにこうも易々とテリトリーに侵入されて気がつかないとは、あまりにも隙だらけの君が心配になる。
とにかく、連絡出来なかった事情を説明しようと口を開こうとした、その瞬間。
上半身に思わぬ負荷を受け、数歩後ずさるだけで受けとめた自分を賞讃してやりたいとしみじみ思った。

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其の漆拾肆。

05. 二人だけの場所へ

『あーちょおドジって肋骨ゆわしてもーてなあ』
あははと暢気に片手を後頭部にあてながら笑う姿に、先ほどの自分の行動を思い返し、誰に対してか分からぬ怒りが湧く。
部活の剣道でもなく、事件に巻き込まれたわけでもなく、ただ単に『車に轢かれそうになった子どもを庇った』ためだと言うから、あんまりにもらしくて言葉をなくす。
事情はともかく、今まで通りに連絡をしようにも、病院内ではいまだに携帯電話の使用が禁止されており、公衆電話のあるロビーまで歩いて行ける状態ではなく。
それでもある程度は互いの幼馴染みを通して話がいっていると思っていたらしい。
…甘いよ、それ。
あいつらは、無邪気なまでに俺たち『で』遊ぶことに一生懸命なんだから。
それでも、幼なじみの発言から妙な悋気のせいで自分から会えなくなるような状況を作った自覚はあり、偶然それに事故が重なった今回の事件。
でもおかげで、こいつに対してだけは意地とか見栄とか、言ってしまえば嫉妬だのというものも、不必要だと分かったから。
「怪我の療養に、二人だけの場所へ、行ってみねえ?」

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其の漆拾伍。

06. 大人気なくても

なんか絶対、ウラがある。
そう疑いたくなるほど、東の名探偵は上機嫌だ。
『療養』なんて言い方をしたのだから、現行犯や手配中の犯人を見つけて追いかけたりしない限りは大丈夫だろうとは思うけれど。
「で、なんでココなん?」
着いたのは、都立図書館。
確かに静かだしふたりだけの雰囲気も味わえるけれど、事件のことはこんなところよりも工藤家にファイルされたもの、というよりもその頭の中身に記録されているものの方がよほど詳しいはずなのに。
「こっち」
館内では当然のことながら囁くような声で言われ、同時に腕を掴まれて引っ張られる。
きっと自分じゃなくて、幼馴染みの彼女にだって同様のことをしているのだろう。
大人気なくてもいい、それでも特別な扱いは自分だけであってほしいとこっそり心の中で願ってしまう。

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其の漆拾陸。

07. もう少し側に

己の好奇心が招いた所為でもあるため、仕方なく休学という措置をとって数ヶ月。
おかげで、復学以降、授業そのものには難なくついてゆけるものの、出席数はもちろん授業態度というものを重視されるようになってしまった。
もともと学校で教わる勉強は、探偵として身につけたい知識よりもレベルが低く、点数重視であることもあって適当にこなせていたのだ。
だから、欠席さえしなければいいだろうと、夜中に小説を読んだり映画を見たりする埋め合わせに惰眠を貪っていた。
それが自業自得ではあるものの出来なくなってしまい、利用するようになったのが校内外を問わずにある図書館だった。
基本的に静かで、自分が利用したい特殊な分野の空間は特に人気がない。
だから、引っ張り込んだのだ。
もう少し側にいたい、そんな気持ちを伝えるには、自宅ではあまりにも自分のテリトリーで照れてしまうから。
「ここなら、誰も来ねぇから」
耳元でひそりとだけ、でも勘のいいやつだからきっと、気づいてくれるはず。

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其の漆拾漆。

08. たとえ相手が子供でも

「お誘いなら、ベッドの方がええねんけど?」
ニヤリと笑うその顔は、当然、確信犯。
ポニーテールの幼馴染みよりも、習慣に近いほど身体に馴染んだ剣道よりも、三度の飯より云々な推理よりも。
いつの間にか自分の中の重要な位置にどっかりと腰を据えてしまったヤツが、数センチの距離にいるのだ。
そりゃもう、未成年だとか関係なく、イタダキたくなるのは仕方がない。
義務教育はすでに終え、それなりにバイトで稼いではいても、所詮は親の脛を齧る高校生、懐は己の自由になるほど豊かではない。
そんな中でやりくりをし、相手に迷惑がられているかもしれないという不安もわずかにありつつ通いつめて。
きつい言葉をもらって別れた直後に、自業自得ではあるが少々のドジから連絡も身動きも取れない状況に陥り、けっこう凹んでいたのだが。
もしかしたら、押されれば引くが、逃げたり隠したりすれば、探偵の性で追いかけてくれるのかもしれない。
気付いてにんまりと笑みを浮かべたことを、たとえ相手の姿形が子どもだったとしても、見せられたもんじゃない。

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其の漆拾捌。

09. 妬かれる幸せ

気心どころか隠し事さえ出来ないほどに知られている互いの幼馴染みたち。
どちらも好意以上のものを持ってくれていたはずなのに、最近は普通の友情ですら怪しくなっている。
子どもの恋愛ごっこのようだったとはいえ確かに好きだと思った相手と、全てを共にしたいと願うヤツと。
自分の中の変化は、どうやらどこまでもシンクロするヤツも同じだったようで、いつの間にかその幼馴染みたちも同様にそれぞれの立ち位置を変え。
蘭は、いつでも信じてくれ、子どもに姿を変えて存在を隠していた時ですら、園子が唆しても浮気などないと信じてくれていた。
その姿を間近で見ていたから信じられたし、それはそれで嬉しく、当然だとも思っていたけれど。
事件のみならず、全てに熱い男は、600kmの距離をモノともしないほどに鬱陶しいほどまつわりつき、放っておかれた彼女は蘭とタッグを組んだ。
好意の延長で妬かれる幸せはあるが、いかんせん、探偵は謎解きの方が大切で、共に出来る相手といられる方を選んでしまって。
それでも後悔はないし、一緒にいても誰にも不思議がられないのはラッキーとも思う。
そして、そういう関係を築き、維持してくれたコイツは、もう手放せないのかもしれない。

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其の漆拾玖。

10. 痛む場所にキスを

「"ニシ"の高校生探偵、辞めようと思うねん」
大学受験を控え、決めたことを告げる。
両親や幼馴染みはもちろん、友人知人は皆、地元の大学に行くと思っているけれど。
期待や名誉など放ってでも、わずかな時間ですら共に過ごしたいと思う相手を見つけてしまったから。
たとえ身体が小さくなっていなくとも、もともとその為人を知りたくて上京したのだ。
出会い、共に過ごす時間の有意義さを体験してしまえば、離れなくてもすむ選択肢があれば迷わずそれを選ぶのは当然で。
お互いに思いを寄せていた幼馴染みたちに対し、申し訳ない気持ちはあるし、彼女たちも受け入れ、状況を楽しんではくれているけれど。
どこかが軋んで、理由もなく、形のない何かが痛む場所にキスをもらう。
ただそれだけで、他のことはどうでもよくなるほどに幸せになれる。
きっとこれからも嫉妬まじりの想いは消せないだろうけれど、ただひとりを何よりも大切にするだろうことは、決定事項なのだと思う。