おはようございます。

2024年10月1日、源氏物語の全訳挑戦19日目です。

10月もよろしくお願いいたします。

前回のあらすじ

     命婦は更衣の実家から宮廷へと戻りました。すっかり夜も更けてしまいましたが、帝はまだ起きていらっしゃいます。ここ最近は長恨歌の屏風絵を明け暮れ御覧になり、恋人との死別を悲しむ歌ばかりを話題にしているのでした。

     

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      第1帖 桐壺(19)

      現代語訳

       帝は命婦に、それはもう事細かに更衣の実家の様子をお尋ねになります。命婦はまことに哀れであったことを、粛々と申し上げました。帝は母君からの御返事を御覧になると、

       

      「これほどもったいない帝の御手紙は、悠長に置いておける場所もございません。このような仰せ言につきましても、真っ暗に思い乱れる心地でございます」

       

        あらかぜふせぎしかげの枯れしより
        はぎうへ静心しづこころなき

       

        荒々しい風を防いでいた木蔭(更衣)が枯れた日から

        小萩(若宮)の身の上が不安で心静まることがありません

       

       などというように無作法な返歌を、心を冷ませずにいた時のことと寛大に御覧になるでしょう。

       

       帝は、「こうまでひどく取り乱すさまを決して見られてはなるまい」と思い鎮められますが、まったく隠しきれません。更衣を初めて御覧になった時からの思い出までかき集めて、次から次へと思い続けられます。ほんの少しの間も更衣を待ちきれなかったのが、このようなありさまでよくも月日を過ごせたものだと、驚きあきれるように思い召されるのでした。

      原文

       いとこまやかにありさまはせたまふ。あはれなりつること忍びやかにそうす。御返り御覧ずれば、

       

      「いともかしこきはおきどころもはべらず。かかるおほことにつけても、かきくらすみだごこになむ」

       

        あらかぜふせぎしかげの枯れしよりはぎうへ静心しづこころなき

       

       などやうにみだりがはしきを、心をさめざりけるほどと御覧じゆるすべし。いとかうしも見えじとおぼししづむれど、さらにえ忍びあへさせたまはず、御覧じはじめし年月としつきのことさへかき集め、よろづにおぼし続けられて、時の間もおぼつかなかりしを、かくても月日はにけりと、あさましうおぼしめさる。


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